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ハンコに上の印があったりなかったりの本当の理由

  1. 印鑑の物話
  2. 5229 view

印章、いわゆるハンコの本体には、上下が分かるように”しるし”がある印とない印が存在します。
ここを上にして押すと正しい向きで押せますよって意味の切り込みだったり、装飾品だったりします。
これに対しては様々な意見がありますね。

  • あの目印がないと彫刻面を見て上下確認しないといけないから面倒
  • あの目印がないと真っ直ぐ押せない
  • 削れてちゃダメなんですよね?ハンコは自分の分身だから切り込みを入れちゃいけない。身を削るっていうから
  • 慎重に押しなさいって意味でしょ?

などなど、様々です。
では、一体本当の理由は?

2015年7月17日に書いたブログですが、2019年8月31日にリライトしました。

印章に上下の”しるし”があったりなかったりする本当の理由

諸説様々な考え方や言い伝えがありますが、実はちゃんとした理由がありました。
まず結論から申し上げますと

本来は”しるし”があったが、ある時期から、ない印章が主流になった

実はこの背景には意外な事実が隠されているのです。
ことの始まりはいわゆる「開運の印」と呼ばれる、印相印とか八方体とか吉相体とか色々な言われ方をする「印相」が起源となります。
ご存じない方のために補足しますと、印相とは厳密に言うと書体のことです。

書体

印相体と呼ばれる書体です。
今から約50年くらい前からはじまったと言われる書体ですが、「手相・人相と同じくハンコにも相があり、丸の中には八方に運気があり、全ての線を枠につけることによって運気があがる」なんて言われているアレです。
私個人の見解では、本当なの?って感じですけれども、この印相に全てが繋がっていきます。

実はそれ以前、実印の書体のほとんどは「篆書」で、本体は上下が分かる”しるし”があるものでした。
それが昭和40年代に印相の誕生と共に、セットで販売され出したのがこの”しるし”のない印だったのです。
当時をよく知る私の親父はこんな風に言っていたのが印象的です。

俺はそれまで篆書で当付(しるしあり)が当たり前だったのに、突然新聞で印相体で無地(しるしなし)が縁起がいいって書いてあって驚いた。
上手いこと言うなって思ったよ。

つまりこの時期を境に”しるし”のない本体が誕生し、それからどちらも存在するようになりました。
そして時代の流れや扱うお店の考え方によって、現在に至ります。

印のない材料が主流になった理由は、印相の考え方に基づいている

まずは改めて、印相の考え方というのをまとめておきます。

  • ”しるし”を削るのは、身を刻むから縁起が良くない
  • 篆書は文字が切れてるから縁起が良くない
  • ”しるし”があることで上下を確認してから押すから良い
  • 印相は八方に縁起が広がるから良い

ちなみに鈴印でも実印は、この”しるし”がない本体を基本的にオススメしています。
大きな理由は先代から継承していることに依りますが、それが正しいと考えるからです。

印を押すのは人生の中でも特に大きな決断をするときだから、上下を確認している間に本当に押して良いのか考え直す

親父も「他は眉唾な話も多いけど、ここだけはそう思う」と言っていましたが、私も同意します。
また他にも、これは私の個人的な考えですけど、彫るのが楽ってのもあります。
上下の”しるし”があればズレないように彫る必要がありますが、なければ関係なく彫れますからね。
するとより効率化を求めるPC彫刻との相性も良い?なんて理由も考えられますよね。
安くて早い方が市場のシェアも多く押さえられますから、主流になりがちなのは他の業界を見ても明らかですからね。

最後に

今回のブログを書くにあたって言い伝えだけでは問題なので、根拠となる2冊を参考にしました。
印相を推奨する「吉相印」。印相を否定する「印海」。
両方の視点を参考に、言い伝えられる鈴印の考えの再考しましたが、同様の考えに至っています。
もちろん最近ではチタンの誕生石のように”しるし”のある印も提供していますので変遷はしていますが、基本的な考え方は変わっていません。

たかが”しるし”されど”しるし”。
ハンコのコトに興味を持たれ、ネット等で色々調べられてる方は混乱してる方も多いコトでしょう。
”しるし”はあった方がいいのか?ない方がいいのか?
書体は篆書がいいのか?印相体がいいのか?
結局良し悪しはなく、最終的には押すあなたが使いやすい、また気に入った印を使うことが正解です。

印章の役割は、あなた決断を示す”しるし”です。
価値は印章本体にあるのではなく、押したあなたの”しるし”にだけあるのです。

 

 

鈴印

〜印を通してお客様の価値を高めたい〜

鈴木延之
代表取締役:株式会社鈴印

1974年生まれ。
A型Rh(+)

1932年創業、有限会社鈴木印舗3代目にして、現プレミアム印章専門店SUZUIN代表取締役。専門店として、印章(はんこ)を中心としたブログを毎日発信。本業は印章を彫る一級印章彫刻技能士。
ブログを書き出したきっかけは、私の親父が店頭で全てのお客様に熱く語っていた印章の価値や役割そして物語を、そして情報が散見する中で印章の正しい知識を、少しでも多くのみなさまに知っていただきたいから・・・
だったのに、たまに内容がその本流から全く外れてしまうのが永遠の悩み♡

一級印章彫刻技能士
宇都宮印章業組合 組合長
栃木県印章業組合連合会 会長
公益社団法人全日本印章業協会 ブロック長

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