最近のブログはAIを使ったデジタルな内容が増えてますけど、ワタクシの本職は超アナログです。
印を彫るためには刃物が必要で、その刃物は自分で研いでいます。
今日は少し、そんな本業の道具の話をさせてください。
「仕上げ砥石」という世界

印章を彫るための刃物は、いつも切れる状態に保っておかなければなりません。
そのために欠かせないのが、砥石(といし)です。
私たちが使う砥石には、いくつかの種類があります。

- 刃の形を大きく整える「荒砥石」
- 日々の研ぎ直しに使う「中砥石」
- 最後の仕上げに使う「仕上げ砥石」
数字が大きくなるほど粒子が細かくなり、刃はより滑らかに、より鋭く仕上がっていく感じ。
理屈で言えばそれだけなのですが、実際にこの世界に入ってみると、一本の砥石にもいろいろな思い入れが積もっていくものだなと、今回あらためて感じました。

写真の砥石には「最高級仕上砥石」と記されています。
仕上げ砥石の中でもかなり細かい部類で、刃を「削る」というより「磨く」に近い感覚のもの。
印刀(いんとう)や判差し(はんさし)といった、我々が使う刀を研ぐには、この細かさが欠かせません。
細かい砥石ほど、研ぐのが難しい

左(仕上砥)が6,000番、右(荒砥)が200番。
そして砥石は番手が大きくなる(細かくなる)ほど、研ぐのが難しくなります。
粒子の粗い砥石は、多少手元が狂ってもぐいぐいと刃を削ってくれます。
ところが細かい砥石は、削る力が弱いぶん、それまでの研ぎの粗がすべて表に出てきます。
角度がわずかに狂っていた、力の入れ方にムラがあった——そうした甘さが、仕上げの段階でくっきりと見えてしまう。
ごまかしが効かないんですね。
正直、若い頃はこの砥石にどれほど苦労させられれたことか(^_^;
荒砥で良いかと思って、中砥で整えて、仕上砥で全く面が合わずやり直し。
くり返せばくり返すほど・・・合わなくなっていく。
まさに無限地獄でした♡
それもこれも、硬い象牙や骨を、狂いのない刃で彫り上げるため。
そのためには、この細かい砥石を、狂いなく平らに研ぎ続ける技術が要ります。
地味な作業ですが、印章の仕上がりを左右する、いちばん大事な土台の部分です。
27年で、ここまで低くなる

さて、この砥石。
私が職人の修行を始めてから、ずっと使い続けてきました。
写真を見ていただくと、左の新しい砥石に比べて、右の古い砥石がずいぶん低くなっているのがわかると思います。
仕上砥石も使う度に凹んでくるため、適宜、中砥石で研いでいく必要があります。

研げば研ぐほど砥石そのものが削れて減っていく。
刃物と砥石を研ぎ続けた歳月が、この高さの差に繋がります。
低くなると、手が土台に当たって研ぎにくくなるんですよ。
だからこのたび、新調することにしました。
実は今回、仕上砥石を平らにしようと思ったんですが、低くて研ぎにくい(^_^;
よく考えたら職人修行を卒業する際に1個買っていたこと思い出しました。
もったいないから、やっぱ研ぎ直そうかとも思ったんですが、ふと頭をよぎりました。
これまで27年使ってるでしょ?
ってことは単純計算で、新しいのおろしても、同じ高さになる頃には、80歳近い(^_^;
しかも単純計算はできず、職人の修行時代は、毎日30本から40本彫っていましたから。
鈴印に戻ってからは平均して一日3〜4本ほどです。
しかも修行時代は無駄にボコボコにして、無駄に平にもしていました。
今は一発で整います。
そう考えると、どう考えても、もう使い終わることはない。
ってなワケで、仕上砥石、新調することにしました!
最後に
おかげさまで、今となっては軽く研げば、恐ろしく切れるようになりました。
以前のように地獄の無限ループになることもありません。
こうして少し振り返ると、改めて技量が上がっていることに気がつくもんですね。
まあ新調すると決めて、古い砥石、1回ゴミ箱に捨てたんですけど(^_^;
やっぱ飾ることにしました。

もし興味がある方は、ぜひ店頭で触ってみてください。
そのツルツル加減、きっと驚かれると思います。
あーそれにしても新しい仕上砥石・・・高くて研ぎにくいな(^_^;
昔、研いでる動画撮ってたんで、ご紹介しておきますね。
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