象牙の違法取引報道を受けて──適正な取引と日本の伝統産業を守るために
先日、警視庁より発表された「不正競争防止法違反及び種の保存法違反」に関する報道について、象牙製品を扱う者のひとりとして、強い関心と責任を感じています。
今回の事件では、象牙製品を「象牙風・マンモス」などと虚偽表示して販売していた疑いにより、複数の被疑者が不正競争防止法違反で逮捕・書類送検されました。さらに一部では、象牙を適切な手続きなく分割・加工し、法的に義務づけられている管理票を作成していなかったとして、種の保存法違反も適用されています。
こうした行為は明らかに法律に反しており、業界全体への信頼を損なう重大な問題です。しかし同時に、今回の件を通じて、日本の象牙取引が厳格に管理されていることを国内外に示す機会にもなったのではないかと感じています。
法令を遵守した正しい象牙取引の必要性
報道の中でも明確にされている通り、日本では象牙の取引が全面的に禁止されているわけではなく、「種の保存法」に基づくルールを遵守したうえであれば、正当な取引が可能です。
象牙を取り扱うには「特別国際種事業者」としての登録が必要であり、広告や販売時の登録番号の表示、一定サイズ以上の象牙製品に対する管理票の作成など、非常に厳格な規制が設けられています。
また私のよく知る象牙関係者は、行政機関の方々とも意見交換を行いながら、正しい象牙取引のあり方や透明性の重要性について継続的に議論されてきたとのことです。
私もその姿勢から多くを学び、今後の活動においても意識していきたいと考えています。
象牙という素材の価値
象牙は、キメが細かく密度が高いため、硬さと粘り気を併せ持つ非常に優れた天然素材です。その特性により、職人の手仕事が細部まで反映され、精緻な加工や表現が可能となります。
古くから印章や装飾品、工芸品などに用いられてきた象牙は、日本の伝統技術と文化を支えてきた素材でもあります。
だからこそ、私たちは法令を守りつつ、この文化を丁寧に未来へと継承していく責任を担っていると感じています。
私たちにできること
今後、業界全体としてさらに信頼を高めていくためには、事業者が一人ひとり、法令の理解と遵守を徹底し、高い倫理観を持って取り組むことが不可欠です。
そして利用者の皆さまにおかれましても、象牙製品をご購入の際には、販売者が「特別国際種事業者」として正しく登録されているかどうかを確認するなど、安心できる取引先を選ぶことが大切です。
象牙文化の価値を正しく伝え、持続可能な形で伝統を守ること。それが、いま私たちに求められている姿勢ではないでしょうか。
参考リンク
今後も鈴印では、法令に則った誠実な運営を徹底し、象牙文化の継承と健全な発展に微力ながら貢献してまいります。