日々こうして長年発信をしていると、時として予想だにしないご縁に繋がることがあります。
数量限定でご紹介しておりましたエブリナ実印が、このたび完売いたしました。
たくさんの方にご興味を持っていただき、誠にありがとうございました。
今回は完売のご報告とあわせて、この一本にまつわる、ある物語をご紹介させてください。
一本の電話から始まった物語
先日、一本のお電話をいただきました。
「実印を作りたくて検索していたら、御社でエブリナを取り扱っていらっしゃるのを見つけて」
そうお話しくださったお客様は、その後ご注文のメールで、このような内容をお伝えくださいました。
エブリナは、私の父が開発に携わった素材なんです。
販売してからしばらくして、象牙なら本物がいいという方が多く、あまり広がらなかったと、少し残念そうにしていた父の姿を覚えています。
それでも、耐久性を調べるために何千回も押印を重ねたり、テレビに出演したり。
エブリナは、父の仕事の誇りのひとつだったと思います。
お父様は、エブリナという印材の開発に人生の一部を捧げていらした方だったのです。
朱肉の乗りの良さ、鮮明な印影、そして象牙に迫る美しい風合い。
私たちがエブリナの魅力としてお伝えしてきたことのひとつひとつが、開発に携わった方々の地道な試行錯誤の積み重ねの上に成り立っていたのだと、あらためて実感いたしました。
お客様が実印を作ろうと「エブリナ」を検索をされていた際に、偶然にも鈴印が取り扱っているのを見つけてくださったそうです。
お父様が心血を注いだ素材に、思いがけない形で再会された瞬間だったのだと思います。
「エブリナ」が結んだ、次の世代へのバトン
今回のエブリナは、ご自身のためだけでなく、いずれ社会人になる息子様に渡すためにも。
お父様が遺した想いのバトンが、お客様の手を経て、次はお子様へと渡っていく。
一本の印鑑が、こんなふうに三代の想いを結んでいくのだと知り、私たちも大変光栄な気持ちになるとともに、
これこそまさに、印鑑の本来の役割ではないかと、再認識させていただきました。
実は、このエブリナ自体も奇跡の巡り合わせでした
今回のエブリナがどのように鈴印に入荷したのか、少しだけ裏話をお話しさせてください。
きっかけは、埼玉県印章組合様の総会にお招きいただき、足を運んだことでした。
そちらで偶然、エブリナのデッドストックが眠っていることを知ったのです。
製造終了からすでに長い年月が経ち、市場からはほとんど姿を消していたエブリナ。
それが、実際に在庫としてお持ちだった埼玉の印章店様のご厚意により、譲っていただけることになりました。
あのとき総会にお招きいただかなければ、このエブリナに出会うことも、そしてお客様とお父様の物語をお聞きすることもなかったかもしれません。
そう考えると、今回の出会いは本当に奇跡的な巡り合わせだったと感じております。
エブリナという印材について
エブリナは、象牙に代わる人工象牙として、ソフトセラミックを使用してつくられた印材です。
その白さを含めた見た目や重量感などが象牙に非常に近く、また朱肉の乗りが良いため、印影が鮮明に出るのが大きな特徴です。
鈴印では2013年まで、長きにわたって販売しておりました。
かつては手彫りができる人工材として広く親しまれていましたが、安定供給の難しさなどから、現在は製造が終了しています。
実は今回のご縁をきっかけに、お客様からこんなお話も伺いました。
随分前に販売中止になっていたと思っていたので、御社のサイトで2013年まで販売されていたと知って驚きました。
発売は1989年だったと記憶しているので、思っていたより長く、そして多くの人の手に渡っていたことを、父に伝えたかったです。
父も、押したときの指への衝撃と耐久性のバランスを考えて、硬さの調整がとても大変だったと話していた覚えがあります。
1989年の発売から実に24年もの間、エブリナは多くのお客様の実印・銀行印として選ばれ続けていたのです。
押しやすさと耐久性という、一見相反する要素を両立させるための硬さの調整。
その裏には、お客様の指先にまで想いを馳せた、開発者ならではのこだわりがあったのだと知りました。
お父様が思っていた以上に、エブリナは長く、そして多くの方の手に渡っていました。
銀行印はまだ1本だけご用意がございます
実印は完売となりましたが、エブリナの銀行印につきましては、現在もご用意がございます。
「開発者の想いが込もった印材を、自分の手元にも」とお考えの方は、この機会にぜひご検討ください。
最後に
印鑑は、単なる道具ではありません。
今回のお話のように、一本の印鑑の向こう側には、それを生み出した方の情熱や、受け継ぐ方の想いが確かに存在しています。
このたびエブリナをお求めくださったお客様、そしてお父様の歩んでこられた道に、心より敬意を表します。
できあがった実印が、いつか息子様に渡される日をイメージしながら、大切に彫っていきたいと思います。
