今日はお客様の言葉です。
ありがたいことに鈴印は、印章をとても大切にされるお客様に支えられています。
そしてみなさんからは、リアルな現場の捺印にまつわる事実を教えていただけます。
決め台詞は「ハンコ捺さねーぞ!」
その方は地元で非常に有名な建設会社のベテラン社員さんです。
昨今の印章不要論は当然目にされていますが、それに対してのご意見でした。
あれって、どうなんですか?ちょっと意味が分からないんですけど。
私自身ハンコは大切なものだって教わってきましたし、ウチの社長もハンコを捺すことを凄く大切にしています。
今は簡単にpdfとかにデジタルの印を捺せちゃったりするじゃないですか?
どうしても現場は急いでるんで、いちいち社長の決済をもらってる時間がない。
だって会社のハンコを捺してもらうためには担当者と上司の認印を押した申請書が必要で、それでようやく捺してもらえる。
それだと時間が掛かってお客さんに迷惑を掛けちゃうんで、こっそりそのデジタル印で進めてたんですよ。
そうしたらある時それが社長にバレちゃって、、、苦笑
それはそれは物凄く怒られました。
今流行りのテレワークの象徴のような出来事ですね。
一方で、こんな体験も数多くあるそうです。
私たちの仕事って、お客さんに実印を捺してもらえないと進まないじゃないですか。
どれだけ他が揃っても最後のピースが実印なんです。
それをお客さんもわかってて。
だからちょっとでもこっちに不手際があると、もう決め台詞のように「ハンコ捺さねーぞ!」
その度にこっちは大慌てですよ。
だから毎回実印をもらうまでは、慎重に慎重に進めていくワケです。
ようやくいただいた時の達成感は、やはり今でも格別ですね。
ご自身の社内での話、そしてお客様とのやりとり。
それらを踏まえて、その方はこのように解釈されているそうです。
ハンコを勝手にデジタルで進めちゃったことに対して、ウチの社長が怒るのも無理ないです。
特に建設業は金額も大きいですから、トップはその1つ1つを慎重に判断する必要があります。
当然責任者であれば、より慎重になるのは当然です。
一度社長が言っていたことがあるんです。「俺は基本的にハンコは捺さないって決めてる。なんでかって?だって捺さなければ大丈夫だから。捺したら終わりだろ?
1つ捺さないってルールを決めておいた方が安心感がある。
でも捺さないワケにいかない。だからその都度捺す前に覚悟を決めるんだ。そして覚悟が決まったしるしとして捺すようにしてるんだ。」ハンコを捺すって、なんかもう後に戻れないっていうか、独特の緊張感が伴いますよね。
あの儀式って絶対必要だと思うんです。
意思の決定はデジタルでもできるのは分かるんですけど、相手も自分も本気かどうかは伝わらないないじゃないですか?
やっぱやめたってひっくる返されても困っちゃいますよ。
だから覚悟を決めて、朱肉をつけて、上下確認して、しっかり捺す、その一連の所作をお互いに行うことで、より確実に気持ちが固まります。
お互いの明確な意思というか熱量を確認しあって、安心して進められるんですよね。
最後に
話を聞いてよぎったのは、イチロー選手のバッターボックスに入る時の所作でした。
同じルーティンを繰り返すことで、集中力を高めて勝負に臨むそれです。
高額の契約って当事者にとっては真剣勝負の世界です。
タイミングが合わなければ打席を外す、それが「ハンコ捺すねーぞ!」の世界に通じるような・・・
確かに数百円の品物なら1Clickで購入できるのは便利ですけど、数千万円や億を超える契約は真剣勝負です。
野球にしろ武道にしろ、真剣勝負の際はお互いに熱量を交わして納得してはじまります。
日本における契約は、最初は審判がいないです。
また基本的に、揉めたら喧嘩すればいいって文化でもないです。
だから合理化よりも柔軟性のある道を選んできたように思えてなりません。
お互いを敬う文化を持つ日本だからこそ、そのための通過儀礼を行うことが最適なのかもしれません。