最後の盛金丹をご紹介します。
これまで希少品として数々ご紹介してきましたが、こちらは本当に最後になりました。
【超希少、盛金丹とは】
この僅か1㎜の盛り上がりに、民生さんの技術の全てが詰まっています。
現在残る民生は全て、上下の印である「あたり」の部分に、フラットな24Kが埋め込まれています。
対してこちらは、印材より僅か1㎜ほど盛り上がる24Kの金丹。
接着剤は一切使わず、象牙や金の温度によって膨張収縮する特性を活かし、互いに支え合う構造によって落下を防いでいます。
盛金丹は表面に盛り上がっているため、引っかかり取れてしまう可能性も高まりますが、そこまでも計算し尽くして落ちないように設計されています。
鈴印でこれまで入手することができた盛金丹は、これまで僅か6本でした。
今回の商品以外は全て、すでにお客様の手に渡っています。
そのため新品で購入できる民生は、残念ながらこちらが最後になります。
【民生(みんせい)】とは
印章に興味を持たれている方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
今は亡き象牙の象嵌士「山崎民生(みんせい)」さんによって取り出された印材。
最も有名な象嵌士でもあり、また文化功労者賞を受賞された民生さんが手掛けた印材は、証としてその名と花押を彫り込まれ、現在ではほぼ全て入手困難となっています。
民生の銘入りの材料はどれもが特に厳選された象牙から作られているため、その独特なアイボリー色の魅力もさることながら、私たち彫刻士にとってはなんとも言えない硬いけど滑らかに刃物が走る感触が、他にはない独特な気持ちよさと緊張感を感じさせてくれます。
年代物のため保管状態に大きな違いがありますが、当社は専用セラーを用意し、仕入れたままの状態を維持し続けています。
新品の60㎜丈×15㎜丸が残っている理由
過去にたくさんあった民生も今では多くの方の手に渡り、残るストックは全国的にも少ないです。
その中でも今回の印は60㎜丈×15㎜丸と、実印として最もポピュラーなサイズ。
デッドストック等で今後も入手できる可能性は残されますが、新品となると話は変わってきます。
なぜなら民生の価値を大きく左右するのが保管状態。
素材となる象牙は歯や骨と同じカルシウム成分のため、経年と共に変色していきます。
原因は紫外線や埃、タバコのヤニなどですが、ケースから剥き出しの表面だけが色焼けてしまったり、鞘(キャップ)を外すとツートンになっていたりと、完璧な状態を維持しているものはほとんど存在しません。
そのため鈴印の場合では遡ること約25年前、民生のために私の親父が全面改装を施しました。
高級印章専門セラーを作り、年代物のワインのように、汚れた空気や日光に触れることのない空間を用意。
これによって、特に状態の良い印材を数多く残すことに成功しました。
今思えばこんなところにも、先代の先見の明を感じます。
上記の通り、保管状態の良い民生はそれだけでも貴重です。
そして60㎜という長さも、15㎜という印面サイズも貴重。
現在印章の長さの主流は60㎜丈です。
当然人気のサイズから売れていくため、現存する民生の多くは、45㎜など短い物がほとんど。
同様の理由から、印面の直径も12㎜丸など小さいものになってきています。
そんな中こちらは60㎜丈×15㎜丸、つまり実印として最も人気のあるサイズです。
「象牙のストックはお店の価値」と先代はよく言っていました。
最後の一品ということで、あまり積極的に披露していなかったのが、いまだに残っている理由でもあります。
民生60㎜丈×15㎜丸盛金丹の特徴
繰り返す部分もありますが、改めてまとめておきます。
【印材】
作者:民生
素材:アフリカ象
全長:60mm丈
印面:15mm丸
重量:22.3g
鞘:印材と同じ牙から取り出した専用設計
あたり:盛金丹(24K)
【ケース】
作者:KF
外側:ワニ革
内側:鶴亀×青フラッシュ
金具:燻枠、福輪
肉池:あり、牙蓋付
鈴印が誇る全てが揃っているのが今回の印章です。
盛金丹の迫力と合わせ、他とは違う圧倒的な存在感は唯一無二です。
まさに王道と言っても過言ではない印。
残すところ2本となりました。
世代を超えて大切にしてきた印です。
世代を超えて継承していただく価値があります。