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印鑑からはじまる物語

  1. 鈴印と人

はんこ店さんと一口に言っても、実はいろんな仕事があります。
そんな中、私の役割は、印鑑をデザインすることだと考えています。
もしかするとみなさんは印鑑を彫ることって思われているかもしれませんが、自分の意識はデザインすること。
はんこって捺すものですよね?
その捺したときの印影をデザインするイメージです。
だから彫ることは、そのプロセスの一環なんです。
言い換えると、デザイナーさんがIllustratorなどのアプリを使うのと同じように、私は印刀を使っている意識です。
なので印影を気に入っていただけたときが、一番喜びを感じる瞬間だったりもします。

そんな中、またみなさまから嬉しいお話をいただきました。

 

印鑑からはじまる物語

印影と同じ書体を指輪と表札にされた

その方はご結婚される際に、当社で実印と銀行印を作られました。
私の親父が健在の頃で、いろいろな選択肢の中から最適な書体のご提案をしたとのこと。
完成した印影が素晴らしく、非常に満足されたそうです。
もうここまでで私たちとしては嬉しい限りなんです。
そして今回新たに教えていただいたのが、さらなる喜びとなりました。

印の書体をお気に召していただきその後、結婚指輪とご自宅の表札にも同じような書体を採用されたそうです。

私たちが提供した文字デザインが、最終的にその方のアイデンティティになる。
これはある意味デザイナーさんと同じ仕事のように思いました。
だからまたより良い印を作らないと、なんて強烈な使命感を持ちますよね。

お子様に印影と同じお名前をつけた

こちらも私の父の代のお話になります。
親父は自分で気に入った印影を残していたんですね。
これは私の参考になるようにって意味もありましたが、お客様にご覧いただいて当社のイメージを知っていただくことにも活用していました。

親父があるお客様にご覧いただいていると、そのかたは1枚の印影に釘付けになりました。
「この文字はなんていう文字ですか?」
『〇〇さんってお名前ですね』
なんてやりとりをされました。
数年後その方が再度ご来店され、驚きの一言をいただきました。

「我が家に第一子が誕生しました。名前はあのとき見せていただいた〇〇です。この子の印をあの文字で彫ってください」

驚きましたね。
まさか印影に命名にまで関わるとは、親父も初めてのことだったようです。
良いデザインは人の心を動かすという体験は、私の中にも大きく残る出来事となっています。

 

最後に

私たちの仕事は、本当に小さな世界の中の出来事です。
僅か数センチの中に想いや技術のたけを凝縮させる作業。
でも人の心を動かす力があるようです。

例えば書道のように、これまで長く続いている自国の独自の文化は、ちゃんと意味があるんです。
漢字だから成り立つ文化。
また私自身、日本人は美意識が特に豊かな国民だと思っています。
それは漢字に触れていることも、決して無関係ではないのでしょう。

昔はんこ店さんは、文字のプロという認識をされていたそうです。
それは漢字を知っていて、漢字を書くのが上手くて、しかも彫ってしまうワケですから。
時代の移り変わりと共に変わるものも多々ありますけど、この本質は変わらないです。
私自身改めて、気を引き締めて取り組んでいかないとなと、感じさせていただく機会になりました。
ここに関しては、完全に技量ですから。

 

鈴印

〜印を通してお客様の価値を高めたい〜
鈴木延之
代表取締役:株式会社鈴印

1974年生まれ。
A型Rh(+)
1932年創業、有限会社鈴木印舗3代目にして、現プレミアム印章専門店SUZUIN代表取締役。
専門店として、はんこ(印章)を中心としたブログを毎日発信。本業は印章を彫る一級印章彫刻技能士。
ブログを書き出したきっかけは、私の親父が店頭で全てのお客様に熱く語っていた印章の価値や役割そして物語を、そして情報が散見する中で印章の正しい知識を、少しでも多くのみなさまに知っていただきたいから・・・
だったのに、たまに内容がその本流から全く外れてしまうのが永遠の悩み♡

一級印章彫刻技能士
宇都宮印章業組合 組合長

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