これまで数々の特別な印材を取り扱ってきましたが、またしても私たちの想像を超える印材を入手することができました。
歴代マスターピースの中でも、特に価値のある品。
単純に希少価値だけで申し上げますと、鈴印史上過去最高かもしれません。
2023年4月26日に公開したブログですが、動画を作成したため、2023年6月14日に再度公開しました。
象牙 極上ハード縦目芯持という希少性
芯持ち材とは
良い印章をご検討される方なら一度は耳にしたことがあるかもしれません。
象牙の芯の部分も含めた印材のことです。
牙は、人間の歯のように中央に神経が通っているため、「芯」と呼ばれる穴が開いてます。
芯は、牙の根元ほど大きく、先端に向かうほど小さくなるのが特徴です。
また芯は穴であるため、その大きさによって印材として扱えるか否かが決まってしまいます。
どんなに上質な素材でも穴が大きく開いていては、捺印した際の欠けとなり、印章として成立しないためです。
つまり芯持ち材とは、それだけでも奇跡的な印材と言っても過言ではありません。
芯持ちの極上ハード材という驚くべき希少性
今回最もお伝えしたいのはこの部分です。
恥ずかしながら私も、以前はハード芯持の印材があるとは知りませんでした。
そのためブログ等では、芯持ちの取り扱いはないとまで書いていました。
まず大前提としてもちろん縦目芯持ちの印材があることは知っていましたが、それは全てソフト材だと理解していました。
鈴印では創業より基本的にハード材のみを使用しています。
これは貴重であることはもちろん、硬くて丈夫であるため、実印に求められる長期間のご使用に耐えうるからです。
一方ハード材の芯持ちは、全て大きな穴が開いていると認識していました。
以上2つの理由から、ないものと信じていました。
ところが「ありますよ」その一言でこれまでの概念が崩されました。
長年プロとしてこの業に関わっていただけに本当に驚きました。
正直「そんな素材があるの?」とまで思ってくらいでしたから。
前述した通り、ハード材のほとんどは穴が開いてしまっています。
ところがその中でも本当に稀に、芯が塞がっているものがあるそうです。
塞がっているから捺印した際にも影響がない。
写真のように持ち手側にははっきりと認識できる凹みがありますが、印面側になると平ら。
そのため捺印への影響は一切ありません。
参考ですが、これまでもハードの芯持は全体の0.001%程度しか取れなかったそうです。
しかも現在は輸入がストップしている関係から、今後も新たに入手することはできません。
また全国を探しても、状態の良いものは片手ほどしか見つからないとまで言われています。
その意味ではもしかすると民生よりも貴重かもしれません。
奇跡の模様
実際に取り出した職人さんからもメッセージをいただきました。
本当売るのが惜しいくらいに素晴らしい印材が取れました。
薄く小さな芯だけでなく、その周りの模様も見てください。
明智光秀の家紋のようにも見える柄が、天然材として取れるのは本当に奇跡的です。
後にも先にも、ここまで美しい印材は見たことがありません。
私自身の感想も同様で、彫るのが惜しいような、またここに刃物を入れる緊張感を今から噛み締めているほどです。
芯持ちの縦目と横目の違い
上記写真は横目です。
これまで鈴印のサイトでは、横目と呼ばれる横向きに材料を抽出した芯持ちの品はご紹介してきました。
対して今回は縦、いわゆる正統派です。
共に驚くほど希少性は高いのですが、縦目と横目を比較すると違いは以下。
【縦目】
- 利点:牙に対して並行に取り出されるため非常に丈夫
- 欠点:芯が大きい場合、捺印した際に写らない
【横目】
- 利点:芯の影響が見た目に比例し、とにかく美しい
- 欠点:牙に対して垂直に取り出されるため、縦目に比べて弱い
ざっくりとまとめるなら、基本に忠実な縦目に対して、美しさを重視した横目。
そして希少価値に関しては、縦目が横目を遥かに上回ります。
75ミリ丈×21ミリ丸という希少性
印材は職人さんに鈴印からオーダーして作っていただくのが通常の流れです。
対して今回は、お客さまからのご要望でした。
「象牙・極上・ハード材・縦目芯持・75ミリ丈×21ミリ丸」
そもそもハード材の縦目芯持というだけで希少なのは前述した通りですが、ご希望はプラス長くて大きな印材。
私自身も即答できる内容ではなかったため、改めて職人さんに確認。
すると「あまりに貴重なため先先代から大切に保管しておいた牙から、2本取れることができます。」との回答をいただくことができました。
そして1本は、オーダーいただいたお客様の手に無事お渡しすることができました。
実際に手にするとその迫力と存在感は群を抜いていました。
横目芯持もそうですが、大きい上に印が目立ち、かつ見惚れるほどのとろけるようなきめ細やかさには心を奪われます。
このサイズの最後の牙蓋
こちらも度々アナウンスしていますが、印材を格納するための印章ケース。
こちらももちろん職人さんによる1つ1つ手作りのKFケースを使用しています。
また高級印材には牙蓋(げぶた)と呼ばれる、朱肉部分の蓋が象牙になっているものを使用しています。
ところがこの牙蓋は現在作れる職人さんがいないため、残っているもののみとなっています。
またこの21ミリという特大の印材用の牙蓋はそもそも数が少なく、今回のものを持って全てソールドアウトとなります。
つまり印材だけでなく、牙蓋もこの21ミリに関しては最後の1点になります。
個人印としても対応可能です
大きな印材のため、お使いになる用途は法人印がメインかと思われます。
そのため今回は「法人印」としてご紹介しましたが、もちろん個人印としてもご使用、ご登録いただけます。
個人印としてご注文の場合は「作成する法人名」のところに、個人名をご記入ください。
少々複雑で申し訳ありませんが、誤って重複を防ぐための対応とご理解いただけましたら幸いです。
最後に
この希少性はもしかすると現存する印材の中でも最も高いかもしれません。
特別な牙をご提供いただいた職人さんに感謝です。
これまでの概念を覆す、ハード材なのに芯が塞がっているという貴重な素材です。
しかも75×21という特大サイズ。
貴重な捺印の場面で抜群の存在感があり、かつひっそりと人差し指の中に忍んでいる印。
もしかすると捺すときの想いが、人差し指から芯を通って、そのまま紙に写り込むかもしれません。
法人象牙 極上ハード縦目芯持75丈×21丸の購入はこちらから
【限定1本】
併せまして、こちらよりもやや小さい60ミリ丈×18ミリもご紹介していますので、ご参考に。
マスターピース・デッドストックとは
マスターピースとは、鈴印の長年の歴史に裏付けられた至高の傑作たち。
印章素材のほとんどは天然材です。
工業製品と異なり天然材は品質が一定ではないため、それぞれに大きな個体差があります。
個体差を知る例として、こんな話もあります。
最高級の天然皮革は最初に王室、次にヨーロッパのスーパーブランドに卸されます。
そして残ったレザーが最後に一般市場に出回ります。
本当に良い天然素材は長年の歴史によって流通経路までも決まっており、それらを後発として入手することは非常に困難です。
私たち鈴印は創業より、特別に良い素材のみを集めて参りました。
結果として、優先的に優れた素材が集まるようになっています。
またそれらは全て、専用セラーによって厳重に保管されています。
マスターピース:傑作・名作
マスターピース
傑作・名作
Wikipediaより
デッドストックは、歴史ある店舗様において眠っている希少かつ状態の良い素材のみを厳選し、特別価格にてご提供する新しい試みです。
品質には徹底的にこだわり、信頼関係の元に譲り受けた最高級品のみをセレクトします。
印章店においての素材は、その店のこだわりです。
なぜならその店主が惚れ込んで手に入れた特別なアイテムだから。
ところが眠ってしまっている宝物のような素材もこの世にはたくさんあります。
そういった全国各地に眠っている宝物に再び光をあて、みなさまに届けることができないか?
良い品と、それを欲するお客様の橋渡しをするのが、デッドストックです。