印鑑は小さな物なので、よく見ないと違いはわかりにくいかもしれません。
でもわかる人にはなんとなくわかる。
今日はこの僅かな違いについてお話ししたいと思います。
優れた印鑑のデザインの秘密
印鑑のイメージは、ほんのちょっとのことで大きく変わります。
例えば画像のように会社の法人印なら、内側の丸の直径で、印章は大きく変わります。
丸が小さい方が、外側に入るスペースが広く彫りやすくなりますが、実際に捺してみるとなんとなく安っぽく見えるものです。
丸の径が大きいほど大きく見え、結果迫力に繋がるのですが、入る文字には限界がありますから、そのギリギリを見極める必要があります。
個人印に関しては、同じ名前でも膨大な種類の中から選ぶ文字によって、ちぐはぐな印象になってしまいます。
パソコンのフォントにおいてはそもそも種類が少ないから、選びようがないのですが。
お名前の多くが画数が多ければ、少ない文字もそれに寄せ、また逆もしかりです。
これは印刷などのデザインにも言えることですが、漢字とカタカナを同じサイズにすると、漢字の方が小さく見えてしまいます。
横線と縦線を同じ位置に置くと、縦線が凹んで見えるのは目の錯覚です。
丸に対して文字を大きくはみ出すように入れると印鑑のサイズが大きく見えるし、逆に札型のように四隅を開けると小さく見えるの、同じく目の錯覚です。
線と線の間隔も影響を及ぼします。
例えば書においては、上部に線が多く、下部をスッキリさせ、重心を3:7程度にした方がスタイルが良く見えてカッコよくなります。
ところが印鑑においては、重心を4:6と少し下げた方がバランスよく見えます。
なぜなら大きな紙に自由に書くのと、小さな限られたスペースの中にゆったり収めることは根本的に大きく違うからです。
このように印鑑の印象は、とても細かいところで決まってしまいます。
では優れた印鑑のデザインとは?
捺したときに違和感のない印影です。
違和感、一部が詰まっているとか、一部が広いとか、つまり気になる箇所がないよう緻密に計算してデザインしていくのです。
最後に
一番左がパソコンのフォントで、右の2つは手書きを元にした印影です。
パソコンのフォントと手書きの文字、見る人によってはその違いがよくわからないかもしれません。
ところが印鑑という物体に変わって、実際に捺し比べてみると圧倒的に違うことは、どなたでもわかります。
言葉では上手く表現できない美しさが感じられるからです。
そもそも丸の中に四角い文字を入れていくのですから、ただ並べただけでは違和感が出るのが当たり前なのです。
その違和感をなくすために、職人は誰も気がつかないような細部を注視しています。
実印は単体で捺すものではなく、複数人と捺し合うものです。
並んだときにはやはり、美しいもののほうが説得力があるものです。