野生動物との共存の難しさと象牙の有効活用について
日本では近年、熊や猪、鹿などの野生動物による被害が深刻化しています。
ニュースでは「熊の出没」が頻繁に報道され、住宅街にまで現れるケースが増えています。
山間部だけでなく、都市部近くでも熊が目撃され、人が襲われる事例も発生しています。
また、農作物の被害も無視できません。
鹿や猪が田畑を荒らし、収穫間近の作物が食べ尽くされることも珍しくありません。
農家の方々は電気柵を設置したり、追い払いのための対策を講じていますが、完全に防ぐのは難しいのが現状です。
こうした背景から、野生動物との共存は日本においても課題となっています。
そしてこのような状況は、東南アジアやアフリカで問題となっている象の被害にも通じる部分があります。
東南アジアにおける象の被害
タイでは野生の象による人身被害が多発しており、2023年には21人が犠牲となりました(参考:日テレNEWS NNN)。
被害の背景
- 森林開発による象の生息域の縮小
- エサ不足による象の集落への侵入
- 住民と象の距離が急接近し、衝突が増加
タイでは象の侵入を防ぐために、ボランティアがパトロールを行い、火薬玉を使って象を遠ざける活動を行っています。
また、AIを活用した監視・追跡システムが導入され、ゾウの移動をリアルタイムで把握し、住民に警告を発する試みが行われています。
アフリカにおける象の過密問題と被害
ジンバブエでは年間50人が象による襲撃で命を落としていると報告されています。
また、アフリカ南部のボツワナでは象の個体数が約13万頭にまで増え、人々の生活に深刻な影響を与えています(参考:CNN)。
ボツワナ政府の対応
- 象の個体数抑制のため、アンゴラやモザンビークへの象の提供を申し入れ
- ドイツの狩猟標本輸入規制に対する反発として「2万頭の象をドイツに送る」と発言
- 象による農作物被害や人身被害の増加が問題視される
このように、象の保護と共存は各国で大きな課題となっています。
タイやボツワナの例からもわかるように、生息地の縮小や個体数の急増により、人間社会との摩擦が深刻化しています。
こうした状況において、象という動物の価値を正しく理解し、適切な管理のもとで共存を目指すことが重要です。
象牙の有効活用と今後の展望
こうした背景の中、私たち事業者ができることは、象が残してくれた貴重な天然資源である象牙を有効活用し、法令を遵守しながら後世に残る良い製品・作品を作ることだと考えます。
象牙は古来より、印鑑や工芸品として高く評価されてきました。
その美しさや耐久性から、適正な管理のもとで利用することで、文化的価値を継承することが可能です。
一方で、密猟を防ぎ、持続可能な方法で象牙を活用するためには、厳格な管理と国際的な協力が不可欠です。
日本においては、合法的に流通する象牙製品は適切な証明書を付与し、消費者が安心して購入できる環境を整えています。
また、象と人間の共存を進めるための研究や保護活動を支援し、象牙の適正な利用とともに生態系の維持にも貢献することが求められます。
自然の恵みを大切にし、その価値を適正に活かしていくことが、今後の持続可能な取り組みとなるのではないでしょうか。