印章店をやっていると、実印のご注文をきっかけに、思いがけない話を教えていただくことがあります。
先日も、実印のご注文にいらしたお客様から、奨学金の保証にまつわるお話を伺いました。
ご自身が連帯保証人、ご兄弟が保証人になられるとのことでした。
「連帯保証人」も「保証人」も、名前は似ていますが、それぞれに重い責任が伴うのだと、この日はあらためて考えさせられました。
奨学金にも「保証人」がいる
私自身この辺の知識がなく、奨学金というと、そもそも学生が自分で借りて、自分で返すものだと思っていました。
ところが「人的保証」というものがあって、これは親族が連帯保証人と保証人になり、いざというときはその人たちが肩代わりする仕組みもあるそうです。
親族に頼らない「機関保証」という道もあるそうですが、その分の保証料がかかるとのこと。
つまり無料でリスクを負って済ますか、お金を払って親族を巻き込まずに済ますか、という選び方なんですね。
「人的保証」を頼める人、実は身近にほとんどいない
今回のお客様は、ご自身が連帯保証人、ご兄弟が保証人という組み合わせでした。
話を伺いながら「じゃあ他の家はどうしているんだろう」と考えていたのですが、これが思いのほか難しそうです。
兄弟姉妹に頼むにも、同じ財布で暮らしていては条件に合わないそうです。
独立していても、お互いの懐事情を見せ合うのは、正直気が引けるという方も多いのではないでしょうか。
祖父母を頼ろうにも、年齢がネックになることがほとんど。
親族以外の人となると、引き受けてくれる知人・友人はそうそういないでしょう。
つまり、「保証人を立てればいい」と簡単に言えるほど、頼める相手は身近にいないのが実情のようです。
今回のようにご兄弟が引き受けてくださったのは、恵まれたケースだったのかもしれません。
連帯保証人は、思っている以上に重い役目
連帯保証人になると、延滞が起きたときにまず全額の返還を引き受けることになります。
しかも滞納が続くと、まだ支払い期限が来ていない分も含めて、残り全部を一度に請求される仕組み。
それでも払えなければ、連帯保証人自身の財産や給与にまで話が及ぶこともあります。
「連帯保証人になる」ということは、これほどまでの重みがあるのです。
実印は、責任を託す印でもある
奨学金の連帯保証人・保証人になるということは、実印を押し、印鑑登録証明書を添えるということです。
その一押しには、いざというとき自分の財産で責任を負う、覚悟が込められています。
今回のお客様は、保証人となったご兄弟の実印と、奨学金を受けられるお子様の実印を、あわせてご注文くださいました。
ご兄弟には保証人になっていただいた感謝を、お子様にはこれから奨学金を受ける当事者としての自覚を、それぞれ託されたのかもしれません。
連帯保証人・保証人になるということは、口約束では済まされない重さを、家族として引き受けるということです。
その重さを分かった上で、我が子にも実印を持たせようとされた親心に、私は心を打たれました。
実印は、手続きのための道具である以上に、家族の覚悟を形にする一本でもあるのだと、今回のお客様との会話を通じて改めて感じました。