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2万頭の象を、そちらに送る——象牙をめぐる話は、そう単純ではありません

2026.09.08
IVORY

象牙の印鑑をご検討の方から、いちばん多くいただくご質問がこれです。

「ニュースで密輸とか摘発とか見るけれど、買って大丈夫なんですか?」

お気持ちはよく分かります。
最近は減ってきましたが、象牙という言葉と一緒に流れてくるニュースは、なぜか良くない話ばかりでした。

ただし、そこで報じられていたのは国際取引の話でした。
日本国内で流通している象牙は、規制が始まる前に輸入されたもので、いま新たに海外から入ってくることはありません。
そのため、まったく別の枠組みの話になります。

また一方で象が生息する現地では、まったく事業が違っていることは、あまり報道されません。

現地の事情は、思っているよりずっと複雑です

2024年4月、アフリカ南部ボツワナの大統領が、ドイツに向けてこう言いました。

「2万頭の象を、そちらに送る。ノーとは言わせない」

ボツワナには約13万頭の象がいます。
人口が約240万人ですから、住民20人に対して象が1頭いる計算です。
象は畑を踏み荒らし、人が命を落とすこともあります。
政府は5年間で、農作物の被害補償として約1,000万ドルを農家に支払ってきました。

きっかけは、ドイツが狩猟で仕留めた動物の剥製の持ち帰りを規制しようとしたことでした。
ボツワナでは、外国のハンターが高額な料金を払って象を狩ることが法律で認められていて、その収入が地域に還元され、増えすぎた象を減らす手立てにもなっています。
持ち帰れないなら、ハンターは来ません。

大統領はこう続けています。
「ベルリンにいながらボツワナに意見を言うのは簡単だ」

守れと言う人は遠くにいて、畑を荒らされ、命を落としているのはこちらだ。
そういう抗議でした。

日本で言えば、クマと人の距離が近づいて問題になっているのと、構造はよく似ています。

もちろん、アフリカのどこでも象が余っているわけではありません。
大陸の象の7割以上が南部に集中していて、地域によって事情がまるで違います。
守るべきだという声も、暮らしを守りたいという声も、どちらも切実です。

いただいた命を、大切に

そのうえで、私たちの考えをお伝えします。

象だけが特別に守られ、他は問われない。
その流れには、正直なところ違和感があります。
牛はいいのか。豚はいいのか。日々口にしている草木はどうなのか・・・

私たちは、命をいただかずに生きることはできません。
だとすれば問うべきなのは「何の命なら許されるか」ではなく、いただいた命をどう扱うかだと考えています。

象牙の印章は、手入れをすれば何十年も、世代を越えて使い続けられる道具です。
一度いただいた命を、使い捨てにせず、最後まで生かしきる。
私たちが象牙を扱い続けているのは、そういう仕事だと思っているからです。

法律の仕組みと、鈴印がどんな登録を受けているかは、こちらにまとめました。
登録票の実物も載せています。

象牙は合法なの?

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太陽と海と夏があればだいたいご機嫌な三代目。 日々「印」を通して、誰かの価値がちょっと上がるような仕事ができたらと考えている。 手彫りの美しさに惚れ込み、ブログでその魅力や違いを発信するのがライフワーク。 書くことも話すことも好きで、気がつけば毎日ブログを更新している。 ときどき印章の話から脱線するのもお約束。 趣味は筋トレと海と長距離ドライブ。

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