「黄ばんだ象牙を、白く戻せませんか?」
このお問い合わせを、長年いただいていました。
これまでの回答は「お受けしていません」だったんです。
理由としまして、象牙は漂白すると白くなりますが、もろくなりますに書いたとおりです。
ですが今回、そのお答えが少し変わります。
象牙の数珠とネックレスに限って、クリーニングを承ることに致します。
印鑑とお箸は、これまでどおりお受けしません。
ではなぜ数珠はできて、印鑑はできないのか?
そこのお話をさせていただきます。
象牙の数珠とネックレスのクリーニングはじめました

実はこちらのサービスは、先代の頃は鈴印でも行っておりましたが、対応できる職人さんがいなくなり、それに伴い終了しておりました。
ところが今回、新たにクリーニングを手掛けることができる職人さんとの出会いによって、再開することに致しました。
ただし、数珠やネックレス、他にも小物などに限定させていただきます。(理由は後述します)

長年使い込まれた身につける象牙製品は、汗などの影響で変色していきます。
ネックレスのような、人から見られる装飾品に関しては、汗染みはあまり美しく感じられないかもしれません。
それらを綺麗にクリーニングすることができます。
ただし、鈴印で受ける以上、ただ白くするのではございません。
方法として例えば極端な手法として、漂白剤等に浸けることで白くすることもできます。
ところがこの方法では、素材を見極めることも、その象牙の良さを活かすこともできず、象牙の素材を根こそぎ傷めてしまいます。
そのため私たちがお願いする職人さんは、一つづつに素材の状態を見ながら最適な状態に合わせていきます。
現在の象牙の風合いを残しつつ、ベストな色合いに調整するという、まさに他に類をみない特殊技術。
秘伝の技術を身につけた、たった1人の職人だからこそ、なしえる手法です。
私自身が職人さんから話を伺って驚いたのは、変色の強い部分のみを、明るい部分に合わせて調整が可能という点です。
つまり、1つ1つ状態を見極めつつ色を整え、最終的に全体を調和させるという、途方もない作業です。
料金と流れ
クリーニングは、28,000円(税別)から。40cmほどの丸玉のネックレスや数珠が目安です。
また、ひび割れた珠だけの取り替え(1個2,800円)、房の取り替え(11,800円)、紐の通し直しだけ(5,800円)も対応可能です。
流れは、お問い合わせ→お写真で概算→お品物を拝見して正式なお見積もり→3週間ほど、です。
仕上がりの色は職人にお任せいただくこと、ひびが入る可能性があること、完全にきれいにならない場合があることなど、あらかじめご了承いただきたい点は、次のページにまとめました。
印鑑とお箸は、お受けしません

印鑑はかなり特殊な状態となっているため、これまで同様お受けいたしかねます。
理由としまして印材は、印面に細い線で文字が彫られています。
つまり非常に細かくなっております。
しかも染み込んでいるのは朱肉の油です。
その油を根こそぎ落とそうとすると、そうでなくても繊細な素材が大きく傷み、ひびが入る危険が極端に高くなります。
印面が欠ければ彫り直すこともできず、実印なら届け出のやり直しも必要です。
一方でお箸は、長い形状のため、加工の際に反るおそれがあります。
また一度薬剤を使ったものを、その後口に入れるということに抵抗がある方も多いのではないでしょうか?
つまりお箸の場合は、リスクだけでなく、お使いになるお客様にとってもあまりメリットがないと思われるため、事前に対象外とさせていただきました。
以上、ご理解いただけましたら幸いです。
最後に
一度クリーニングをしても、当然ですが、使っているうちにまた少しずつ色は変わっていきます。
これは象牙が生きていた素材だからです。
綺麗な状態を維持する管理方法と致しまして、以下を推奨します。
- 外したあと、使ったあとに綿の布で汗を拭き取る
- しまうときは風の当たらない暗いところに置く
この2つで、次に色が気になるまでの年月がまったく変わりますし、より自然な経年変化をお楽しみいただくことも可能です。
くわしくは象牙印鑑のお手入れ・保管方法をご覧ください。
そして最後になりますが、「使い込んだ色のままがよい」という方には、クリーニングをお勧めしません。
それもまた象牙の楽しみ方のひとつですし、上記の通りの管理方法で大切に保管されている場合は、むしろそのままの方が象牙ならではの味わいが増します。
過去には親御様からお嬢様に渡されて使う、そんな事例もありました。
その際にクリーニングして、綺麗な状態でお渡しされる。
ここでふと思い出したのは、フランスでは上質なレザーなどは世代を超えて継承されると耳にしたことがあります。
かつては日本も、良いものを大切に長く使う文化が強くありました。
レザーも象牙も大切な命をいただいたものです。
丁寧に取り扱うことで、どちらも長く使えます。
もちろん経年と共に思いも寄らない汚れやシミが付いてしまうこともございます。
そんなお困りごとに、少しでもお役に立てましたら嬉しい限りです。