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象牙は漂白すると白くなりますが、もろくなります

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象牙は漂白すると白くなりますが、もろくなります

お客様からよくあるお問い合わせ

このようなお問い合わせを多くいただきます。
その際には以下のようにご回答しております。

もしかするとこれは一般にはあまり馴染みのないお話かもしれませんので、詳しく説明いたします。

2014年12月8日に公開したブログですが、2025年3月29日に大幅リライトしました。

象牙の自然な色と経年変化

まず新品の象牙は、真っ白ではなく、薄いクリーム色をしています。
やや黄色みがかった美しい色合いです。
象牙は天然素材ですので、個体差により色味も若干異なります。

この象牙が長年使用されていくと、美しい飴色に変化していきます。
また、朱肉を使用した印面の部分は、朱色に自然と染まっていきます。
この変化こそが象牙の魅力であり、長い歴史と使用感を感じさせる重厚な風合いとなります。

写真の上部が印面になり、朱色に変色しているのがわかります。
個人的には変色した方が歴史を感じられ、迫力があると思っております。

ただし、この変色が均一に美しく進めばよいのですが、汚れを放置してしまうと単なる染みとなって見た目が損なわれることもあります。

象牙の漂白:見た目は白くなるがリスクが大きい

象牙も漂白することで白く戻すことは技術的には可能です。
方法としては衣類の漂白と同様で、漂白剤に浸して色素を抜く方法です。
一見すると変色した象牙を元の白い状態に戻せるように思えます。

しかし、この方法には重大な問題があります。
一時的に見た目は白くなりますが、象牙の品質そのものが変質してしまうのです。
当店では以下の3つの重要な理由から漂白サービスは行っておりません。

1. 象牙本来の特徴と美しさが失われる

漂白を行うと、象牙特有の模様や風合いが消えてしまいます。
象牙には自然の模様があり、その模様によって品質が判断できるのですが、漂白するとその大切な特徴が完全に失われてしまいます。

また、象牙本来の艶感も失われ、乾燥したカサカサとした質感に変わってしまいます。

当店では象牙の持つ自然な色と艶こそが本来の姿だと考えており、それを著しく損なう処理は行っておりません。

2. 破損リスクの増加

漂白処理は専門業者に依頼することになりますが、その移動の過程や処理中に破損やヒビが生じるリスクがあります。
特に印面部分が欠けてしまった場合は彫り直しが必要となり、実印の場合は登録変更の手続きも必要となります。
お客様にこうした余計な手間とリスクを発生させないためにも、当店では漂白サービスはお断りしております。

3. 材質の変質—最も重要な問題

漂白によって象牙の質が大きく変わってしまうことが最も大きな問題です。
つやのある張りのある素材から、乾燥してもろい素材へと変質してしまうのです。

興味深い事実として、通常の象牙はカルシウム主体の構造を持ち、人間の骨や歯と同様に燃えにくい性質を持っています。
過去には火災で耐火金庫が焼失した中でも、象牙の印鑑だけが無事だったという事例もあります。
これは象牙の優れた特性の一つです。

しかし漂白した象牙は化学的性質が根本から変わり、燃えやすくなってしまうのです。
つまり、見た目を白くする代償として、象牙の最も重要な特性を失うことになります。

当店で実験的に両方の象牙を火にかけたところ、漂白していない象牙(左)は表面が黒く変色しただけでしたが、漂白した象牙(右)は炭のようにスカスカになってしまいました。
象牙の最大の利点である耐久性と耐火性が失われてしまうのです。

象牙を美しく保つ簡単なお手入れ方法

象牙は天然素材ですので、使えば使うほど変色していきます。
日光に当たれば焼け、空気に触れても変化します。
しかし、汚れとは異なる美しい経年変化をさせるには、ただ一つの簡単なケアが効果的です。

・使用後は必ずティッシュなどで朱肉や汚れを丁寧に拭き取ってください
・たまにマイクロファイバークロスなど、繊維が抜けない布で磨いてください

これだけです!

象牙は多孔質のため、汚れが長時間付着していると内部に染み込んで落ちなくなります。
使用後すぐに汚れを拭き取ることで、きれいな経年変化を促すことができます。

まとめ:漂白より正しいお手入れを

象牙の経年変化による変色を見て「漂白して元の白さに戻したい」と考えるのは自然なことかもしれません。
しかし、漂白は見た目を一時的に白くする代わりに、象牙本来の品質、強度、耐久性、そして燃えにくいという特性を根本から損なってしまいます。

革製品と同様、天然素材である象牙は手をかけるほど美しく長持ちします。
しかも象牙のお手入れは革よりも簡単で、使用後に拭き取る、たまに布で磨くだけで十分です。

適切なお手入れをすることで、あなただけの象牙印鑑の歴史が刻まれていきます。
経年による飴色の変化や朱肉の色移りは、長年の使用の証であり、むしろ価値として楽しんでいただければと思います。

経年変化は象牙の魅力の一つ。
漂白で元の白さに戻そうとするより、正しいお手入れであなただけの歴史を刻み込んでください!

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太陽と海と夏があればだいたいご機嫌な三代目。 日々「印」を通して、誰かの価値がちょっと上がるような仕事ができたらと考えている。 手彫りの美しさに惚れ込み、ブログでその魅力や違いを発信するのがライフワーク。 書くことも話すことも好きで、気がつけば毎日ブログを更新している。 ときどき印章の話から脱線するのもお約束。 趣味は筋トレと海と長距離ドライブ。

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