こちらのブログをご覧の方は、特にネットとの親和性の高いと思われます。
もちろんそれぞれの環境で目にする情報は異なりますが、ここ最近私の所にはまた象のおぞましい内容が数多く回ってきていました。
簡単に言うと、象が可哀想だから象牙を買うなと言う発信です。
これまでのブログやHPまたは鈴印新聞等で発信して参りましたが、私自身はそれらは事実と異なるとの認識です。
そんな折、時を同じくして信頼できる方が正しい情報発信をされていましたので、そちらをお借りしつつご紹介して参りたいと思います。
日本が象牙の最大の輸出先は事実無根
センセーショナルなニュースは瞬く間に拡散します。
ネットではそれがさらに顕著でもあります。
それが例え一方的な情報だとしても。
それらの情報の多くを拝見するたびに思うのは、視点です。
象が可哀想。
もちろん全くもって同感ですし、その感情を感じるのは非常に大切だと思います。
でもそこには、象の生息地に寄り添う原住民の視点が欠けています。
以下のサイトが非常に分かりやすく書いていますので、ご覧ください。
一部を引用するとこのように書かれています。
しかし、その一方で、アフリカゾウの生息地では、これまでの保護政策によってゾウと住民の共存が困難になっている地域も多い。ゾウが害獣化して農作物を荒らし、ときには人を襲っているのだ。
つまり一方的に象を守るだけになってしまうと、結果的に原住民の命が危険にされされるという事実です。
また同じく象牙は日本が最大の輸出先という内容も流れてきますが、これも全くもって事実誤認。
そんなタイミングで、いつも適格な情報発信をされている方の、以下のようなツイートが目に飛び込んできました。
昨日から象の死体画像と「日本が最大の輸出先」というツイートが流れてくるが、完全に事実無根。日本への象牙の輸入は禁止されていて、税関統計見ても大規模な密輸は無い。日本で流通してるのは、20年以上前に日本に輸入された象牙のストック。今、密猟で殺されている象の象牙は中国に向かっている。
— Noriaki Yoshikawa (@yoshikawanori) 2019年5月12日
私自身、吉川さんにお会いしたことはありませんが、象牙に関して非常に正確な発信をされていて、いつも参考にさせていただいてます。
そのきっかけとなったのは、以下の事実の報告でした。
こちらには以下のように書かれています。
もっとも、本報告書で確認されたとおり、客観的な根拠に基づけば、日本の象牙取引がアフリカゾウの密猟に直接的には関係していないことは明らかな一方、アフリカゾウの個体数が絶滅が危惧される水準にあり、国際的に懸念されていることも確かです。
そして象の生息地に関してもこのように書かれています。
実は、アフリカゾウをはじめ希少な野生生物の種の保存にあたって大切なことは、野生生物の生息地の確保です。生息地の不足によって、ゾウが害獣化して農作物を荒らしている現実や、農業以外に頼れる産業が無いため、農地の拡大によってゾウの生息地が圧迫されている現実から目を背けたままでは、結果的に生じている密猟を防ぐことはできません(注2)。大切なことは現実を正しく見つめて対策を考えることです。アフリカゾウの密猟の原因を、根拠なく日本の市場の問題にすり替えることは、都合の悪い事実を隠してアフリカゾウの生存を脅かし続けることだと言うことです。
ではどうしたらいいのか?の記載がこちら
(注3)野生生物の保全にあたって、生息地の確保の重要性と、野生生物の商取引がもたらす保全上の利益の重要性を解説した文献として以下が挙げられます。
石井信夫「ワシントン条約における野生生物利活用の考え方」, 哺乳類科学51(1) : 119-126, 2011
鈴印HPにも記載がありますように、「象牙の正常な国際取引が象の保護につながる」ということになります。
最後に
象牙に関してはここには書きづらい、非常に強い力が働いているのが現状です。
そのためネット等ではかなり一方的な情報のみが強く発信されている傾向が見られます。
そんな中私たちのできることは、象とその生息地に住む方々、そして一生モノとして大切にご使用いただいている皆様のために、正しい発信をすることだと考えています。
最後に吉川さんもこのようにまとめられています。
今回、あの象の画像を見てショックを受けた方も多いと思いますが、あの画像は毎度使われるものです。個人的には「今回のワシントン条約締約国会議に向けて、会議直前に、またいつもの画像、いつもの手法で来た」という感想。感情的にならず、象の保全という複雑な問題を真剣に考えていきましょう。
— Noriaki Yoshikawa (@yoshikawanori) 2019年5月12日
大切なのは正しい情報を元に、どうしていくか?なのではないでしょうか。