今朝の下野新聞の一面は、鹿の捕獲量についてでした。
気になる人は一部なのか?と思いつつ、私自身は見過ごせない内容。
なぜなら私が過去に仕事柄徹底的に調べた「象」の問題とシンクロしたからです。
同じような問題を抱えつつ、対応は全く逆。
これはなぜなのでしょうか。
県内シカ捕獲1万3126頭
要約すると
「シカによる被害が深刻化していることから、県は林業従事者や農家を支援するために、1頭当たり2千円の奨励制度を創設した。その結果2022年は、過去10年間でシカの捕獲数が2番目に多い結果になった」
といった感じでしょうか。
被害の状況
- 高原山山腹の牧場は、牧草がシカによって食べ尽くされて放牧ができない
- 同山一帯に群生するササは、場所によって葉が一面食べられて枯れ野の様相に
- 牛が好む新芽が食べ尽くされ、資料に適さない硬い牧草が生い茂る状態
- 植生が変わり、土壌流出の危険も
対策
- 乳牛の放牧が行えず、市外の牧場に振り替え
- 森と牧草地との境に柵を設置
- 県が公共牧場パワーアップ推進事業として、約1キロの柵にシカの通り抜けを防ぐためのフェンスを取り付ける
結果
- 柵の下からシカが地面を掘って潜り抜ける
- フェンスでも完全に侵入を防ぐことはできない
これらの問題を受けて、報奨金をつけて捕獲数を増やし、今後も新たな対策に取り組むとのことでした。
一方で「2016年度の約35,000頭をピークに減少し、19年度は約27,900頭で、さらに減少している可能性もあるため、本年度中に生息数を調べ、次期保護管理計画策定の参考にする」ともしています。
つまり生息数のバランスと取るということですね。
象の場合
象の場合「絶滅の危機に瀕している」とか、「かわいそう」などの理由で、象牙等の取引はかなり強く規制されています。
では実際に現状はどうなっているのか見てみたいと思います。
絶滅の危機?
象の「絶滅の危機」に関しては、環境省のサイトでも以下のように書かれています。
問1 ゾウは絶滅の危機に瀕しているのでしょうか?
⇒ゾウの絶滅のおそれの度合いは、種類や地域によって異なります。アフリカの南部に生息するアフリカゾウについては、絶滅のおそれは小さいとされています。
環境省「象牙Q&A」
政府の公式見解でも、絶滅の恐れは少ないとされていることがわかります。
かわいそう?
「かわいそう」という意見も、一方で現地では今回のシカと同じように、象が人々の害獣として困っているという側面もあります。
具体的には、セレンゲティ国立公園に隣接する農村では、ゾウが畑の作物を食い荒らし、さらには人を殺す事件も起こっています。
そのため現地では以下のように捉えられているんです。
人々は生活の糧である農作物を一網打尽にする、いわゆる害獣扱いをされている象に、命の危険すら感じています。
象は巨大で、群れで広範囲に渡って行動しますから、食料がなくなれば人の農作地にも入り込みます。
そのため象牙の輸出で獲得した外貨で、人と象それぞれの生活環境を整える資源に充てていたんです。
出典:象牙専門
つまり今回の鹿と象は、その近隣に住む人々にとっては全く同じく、困った生物という扱いであることがわかります。
鹿も象も同じ問題なのに取り扱いが違う
どちらも同じ問題にも関わらず、鹿の場合は県が住民を守る努力がなされ、象の場合は象の保護だけがなされる。
ちなみに象に関しては保護されるというより、放置されているといった方が近いかもしれません。
今回の下野新聞ではシカの捕獲後の対応までは書かれていませんでしたが、農林水産省の野生鳥獣被害防止マニュアルによると殺処分となっているようです。
最後に
鹿に関しては、それに困っている住民が県を頼って解決しているようです。
象に関しては、それに困っている住民の声より大きな声が強いのが現状です。
そこにはいろいろな力が及んでいます。
いずれにせよ私が言いたいのは、人は他の生物の命を持ってしか生きることができません。
だからこそ、どの命にも感謝する気持ちが大切なのではないでしょうか。
共存共栄するためには、日本で昔から受け継がれてきたように、命に感謝しつつ、今回の栃木県の対応のようにバランスをみて取り組んでいくことが大切なように思われます。
鈴印では象牙に関してさらに詳しくは専用サイトを用意しています。
今回のブログで引用した内容も、ほぼそちらでまとめています。
興味を持たれた方は、併せてご覧ください。