人という字は支え合っていません
ちょっと前にネットを見てましたらこんな記事が載ってました。
武田鉄矢が金八先生での名言を否定「人という字は支え合っていない」
あの金八先生の名言を否定したって記事ですね。
ワタクシも完全金八世代ですから、これは見逃せない。
だって「人が人を支えると」信じてましたから。
2014年11月25日に書いたブログですが、リライトして2018年5月14日に公開しました。
まず、覚えてる方も多いと思うんですが、ちょっとおさらいしてみましょう!
金八先生はドラマの中でこんな名言を残していました。
君たちいいですか〜。人という字はねぇ、ひとりの「人」がもうひとりの「人」を支えている字です。つまり、人と人が支え合ってるから人なんです。人は人によって支えられ、人の間で人間として磨かれていくんです。
名言ですね!
ワタクシも当時は非常に感銘を受けたのをよく覚えておりますよ。
これを先ほどの記事では否定したって事。
井ノ原の「快」、有働アナの「有」と、2人の名前に使われている漢字をそれぞれ解説したところで、有働アナは「“人”という字は、人と人が支え合ってできているというのは本当でしょうか?」という視聴者の質問を紹介した。
すると、武田は「これは白川先生がどっかでハッキリおっしゃったらしいんですが…“人”という字は支え合っておりません!」と断言し、かつての名言を自ら完全否定した。
〜中略〜
武田の解説によると、人という文字は、甲骨文字で人間を真横から見た形だという。livedoorニュースより
ただこの記事を見ただけだとイメージは伝わるけど、よく分かりませんよね?
なので詳しく解説してみたいと思います。
「人」の文字の成り立ち
漢字には必ずその成り立ちがあり、その過程の一部をまとめて書体と呼ばれております。
辞書を見るとこんな感じですね。
そして古い順に並べると、これがちとややこしい。
大きく2つの流れがあります。
- 甲骨文字→篆書→隷書→楷書→行書
- 甲骨文字→篆書→隷書→草書
の2つ流れ。
今回の「人」の解釈は篆書から楷書までの流れなので1が対象になります。
そしてその順に並べなおすと以下。
一番上の漢字の基本となる甲骨文字≒篆書が「人間を真横から見た形」になり、支え合っているのではなく自立しているのが分かります。
それが隷書として変化をくり返し、今の楷書になっています。
非常に長い歴史なので、同じ書体でもかなりの違いが出てしまうんですね。
白川静氏による学説
上記のリンクには以下の内容があります。
武田は、漢字の“生まれ方”はいろいろあるとしたうえで、日本の漢文学者・白川静氏による甲骨文字の学説を元に解説することに。
では改めて白川静氏の常用字解から引用したいと思います。
象形。
立っている人を横から見た形。「ひと、人間」をいう。
手足をひろげて立っている人を正面から見た形は大。体をかがめた人を横から見た形は勹(ほう)、人の胸に×形の文身(一時的に描いた入れ墨)を加えた形は匈(きょう)で胸のもとの字、妊娠して腹の大きな人を横から見た形は身、人の腹の中に胎児のいる形は包・孕(はらむ)で、みな人の変形した形である。人(儿じん)が頭上に火の光を載せている形は光 〜中略〜 踵をあげて爪先立ちをしている人を横から見た形は企である。
白川静常用字解より引用
「人」という字はただの横から見た形。
つまりここから考えますと、ひとりで立って生きていくもの・ひとりで立てて一人前なんて解釈になりますかね。
最後に
文字の歴史を紐解くと、例えば上記の漢字のルーツでもあり実印などの文字でもある篆書も、まとめられたのは秦の始皇帝の時代。
紀元前200年以上も前のお話です。
それから長い年月をかけて変化、進化して今の楷書に至ります。
だから物語が諸説生まれてもなんら不思議はありません。
とはいえ学術的なまとめが今回のブログになりました。
これを機に漢字というモノに興味を持っていただけましたら嬉しい限りです。
私自身は今でも、金八先生の教えは大好きですから。