現在は象牙って、印章のみならず誰でも売れる品ではないんですね。
象牙を販売するためには「特別国際種事業者」に登録しないといけない。
そして更新期限の5月末を待たずに、ようやく登録完了することができました。
特別国際種事業者登録とは
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(「種の保存法」)」 が平成29年(2017年)6月2日に改正され、平成30年(2018年)6月1日に施行されたことにより、象牙事業については届出制が登録制に変わりました。これにより、象牙製品等(全形を保持していないカットピース(分割牙)及びその加工品を示す。種の保存法第12条第1項第4号で規定される「特別特定器官等」を示す。)の取引(有償、無償を問わない。)を事業として行う方(個人事業主又は法人)は、「種の保存法」に基づき、特別国際種事業者としての登録が必要です。
公的機関が出している文章なんで分かりにくいんですけど、抜粋すると以下になります。
象牙製品等を事業として行う方は、「種の保存法」に基づき、特別国際種事業者としての登録が必要です。
仮に登録をしないで販売したり、登録に関して違反があった場合などは、罰則を伴う厳しいルールです。
そのため例外なく、象牙を販売する場合は登録が必須になります。
また細かい話になりますと上記引用にもありますが、2018年から届出制から登録制になりました。
事業者として届けてあれば後はご自由にどうぞ、から、登録して管理されるという厳しいルール改正になり、もちろん登録事業者名簿も公開されています。
しかも今回の更新は、これまでの無料に対して有料。
つまり今後象牙を販売できるのは、決して安くない費用を払って登録した事業者のみになります。
そのためこれを機に、今まであまり象牙にこだわりのなかった事業者や、費用に見合わない実績の事業者などは、事業廃止手続きを行って今後象牙の販売はしなくなるそうです。
特別国際種事業者登録の詳しくは一般財団法人自然環境研究センターのHPをご覧ください。
特別国際種事業者が扱う象牙は、国から安心のお墨付きをもらっています
私たち事業者にとっては登録の手間だったり費用だったりと、あまりありがたくない側面もある事業者登録。
でも一方で象牙を購入されるみなさん、いわゆる一般ユーザーさんには大きなメリットがあります。
それは、登録が厳しくなることによる安心です。
運転免許のように条件を満たして初めて登録することができて、また違反をすると剥奪される登録番号ですから、国が定めるルールを順守する必要がある。
つまり違法なものが一切混ざらない、国が安心と認めた正規品の象牙のみを購入することができます。
私たち昔から扱っている事業者からすると、登録や管理に関して今までとなんら変わらないんですが、お墨付きがある点では大きな違いになりました。
昨今象牙に関して根拠のない極端な報道を耳にすることがありますが、有料登録制によって厳格に管理していることが事実です。
象牙を厳格に扱うことは、原産国を守ることに繋がる
私たちはこれまで、印章に最も適した材料は象牙と考え、長年に渡って取り扱ってきました。
それがここ最近の様々な偏った報道により、調べる機会に繋がり、さらに大きな志を併せ持つことができました。
私たちの事業は繋がり繋がって結果、象牙の原産国でもある南部アフリカの人々を守ることになっていたのです。
現在ワシントン条約によって象牙の輸出入は厳しく規制されています。
それによってほとほと困っているのが、ナミビア・ボツワナ・ジンバブエ・南アフリカなどの南部アフリカの人々です。
産業の1つ、象牙の輸出が規制されているため、外貨の獲得が難しくなり、象と人との生活環境が整わなくなっている。
また害獣である象に農作物を一網打尽にされ、命の危険すら感じています。
将来的には象牙の輸出入の再開があると言われていますが、もし仮に日本のように正しく象牙を管理できる国がなくなってしまった場合、輸出先がなくなってしまいます。
つまり特別国際種事業者登録という厳しいルールを順守できる日本が合法市場を残し、原産国を将来的に守ることに繋がっているんです。
現在国内に流通する象牙はワシントン条約以前に輸入したものですから、象牙を買うことで現地の支援になっているわけではありません。
ただし、正しく管理している登録事業者から購入されることで、結果的に輸出入再開の時の購入国として、現地のサポートをすることに繋がります。
サポートの具体的な内容は、東京象牙美術工芸共同組合の「私たちからのお願い」P5から引用させていただきます。
ワシントン条約の決議10.10 によって、象牙の国際取引が認められた際には、その取引によって得られた収益は、“全て”アフリカゾウの保全と、生息地や地域住民の開発計画のために使われることとなっており、過去の取引では、アフリカゾウの生息地のパトロールカーの購入資金などに充てられました。 つまり、これが実現することによって、地域住民がアフリカゾウ保全に貢献しようというインセンティブが生まれるのです。 これらの象牙を、条約のルールに沿って、持続可能な有効利用ができる日がくれば良いと願っております。 それが、自然との共生に基づく日本の象牙産業の伝統を、後世に伝えていくことに繋がります。
最後に
1つの事業者登録のお話でしたが、そこには深く広い背景が広がっています。
それらをひっくるめて私たちは守っていきたいと考えています。
もし店頭にお越しの際は、そんな背景を想像しながら、事業者表示をご覧いただければと思います。