店頭では多くの会話が繰り広げられますので、興味深い内容が盛りだくさんです。
今回はお名前の文字の画数(線数)に関してのお話です。
画数と彫刻、まずはお客様のご意見から。
「私の文字って、画数多いから彫るの大変じゃないですか?」
「私の文字って、画数少ないから安くしてよw」
などなど。
この点に関して、みなさんの感覚と彫る側の感覚が結構違うなと思っているんです。
画数が多い字と少ない字、彫るのはどっちが大変?
今回はまず結論から申し上げますと・・・彫るのは、画数が少ない字の方が大変です。
- 線の数が多い=細かいから大変だと思うのかもしれませんが、彫る面積は少ない。
- 線の数が少ない=彫る手間が少ないと思うのかもしれませんが、逆で彫る面積が多い。
私たちって細かいの別に苦じゃないんですよ。
訂正印みたいな6ミリくらいの小さいものや、あとは割り箸の後ろとかに「齋藤」って全然余裕で彫れますから。
細かさに対しての抵抗感って全くなくて、逆に彫る面積が多い方が、彫る回数が増えて手が痛くなります。
つまり、彫る大変さで言うと、彫る面積が多い方=画数の少ない方が大変なんです。
だから一番大変なのって、実は角印なんです。
線数に関する裏話
ここまでで彫る大変さで言うと「面積が多い方が大変」と書きましたが、私の場合、つまり文字をデザインして彫る立場から言わせていただくと、彫ることに関しても画数の差はほぼ関係ありません。
なぜならってとこが鈴印のこだわりになりますが、文字をデザインする際に、画数が少なくてスカスカだと重みがないんですね。
そのため意図的に線の数を増やします。
見た目の問題ですが、重みを出すために、鈴印では画数の少ない文字の場合、登録可能な範囲で線の数を増やしています。
線数を増やす方法1
一例を挙げると、例えば「三」
もちろん他の文字にも関係しますけど、例えば「三瓶」さんのように画数の差が大きい場合、篆刻辞林を引用して、下側の文字を使用します。
もちろんそれじゃイヤって方もいるので、ご相談の上で。
ただしあくまで印鑑登録可能が大前提で辞書を根拠にしていますから、その点はご安心ください。
線数を増やす方法2
印鑑によく使われる篆書や印相体の場合、正しい文字なら線を伸ばしても良いという考え方があります。
具体的には「一」。
篆刻辞林にはこのように表記されています。
上から3つ目がそれに該当して、線を伸ばして曲げても「一」であれば「一」となります。
この応用をあらゆる文字の随所に使い分けて、画数の少ない文字と、画数の多い文字とのバランスを取っています。
ちなみにこちらも印鑑登録できるのが前提で、例えば「田」の中央を伸ばすと「由」になっちゃうなど、最新の注意を払って完成させています。
線を増やす方法まとめ
実印はフルネームの場合が多いです。
そのため例えば、3文字だったり4文字だったり5文字の中で、上記の方法でバランスを取ります。
全部の画数が近い場合は比較的スムーズなんですけど、大概バラバラです。
意識しているイメージは、その中で最も画数の多い文字に合わせて、少ない文字の線を伸ばす感じです。
線を伸ばす方法はその時の感覚のため、同姓同名でも毎回同じ文字ができないなど、バランス以外にもメリットがたくさんあります。
最後に
こうして改めてまとめると、画数の少ない文字の方が毎回苦労していることを思い出します。
でも大変なのは彫ることではなくて、デザインを考えることなんですけどね。
比較的印材の話が多いブログですので、たまにはこんな技術的な側面もご紹介させていただきました。
そうなんです。
ちゃんと考えて彫ってるんです♡