先日、山梨県立博物館で開催されていた「国宝金印」の展示会にお邪魔してきました。
みなさんも歴史の授業などで一度は耳にしたことがあるかもしれません。
私たちのように印章を生業としている人間からすると、日本に最初に登場した印、つまり業の起源ですから特別です。
かつて私の祖父も現物を見に足を運び、感動のあまり涙したという話は私も伝え聞いています。
祖父は一体どんな気持ちでそれを見たのか?
今となっては知ることはできませんが、同じ道を継いでいる者として一度は見てみたいと思っていました。
片道200㎞超も、そんな想いが勝りました。
金印は浪漫でした
Google MAPに言われるがままに山梨県立博物館に到着。
写真を撮り忘れましたが、美術館正門前にも大きな展示があり一目瞭然。
自ずと期待も高まります。
中に足を運ぶと美術館らしく厳かな雰囲気。
あたりを見渡すと明らかのそれとわかる、どこかで見たことのある展示を見つけることができました。
こちらにもなにやら見覚えのあるパネルが。
また奥に鎮座ましますのは、山梨県にある印章資料館の世界一巨大なはんこ「不動如山」のレプリカ。
改めて歴史ある行に携わっていると、いろいろな創作物があるもんだなと実感。
他にも貴重な展示物に囲まれ、否応なくテンションも上がってきます。
そしていざ入場と思いきや・・・
館内撮影禁止^^;
まあ、そりゃそうですよね。
祖父が行った際も同様だったようです。
なのでここからは、場内のイメージを文章だけでお伝えしたいと思います。
少々荷が重いですけど。
展示場の中
金印のパネル
薄暗くなっている場内で最初に目に飛び込んでくるのは、金印の説明。
約2.3センチ四方の印面に篆書体で「漢委奴国王」が刻まれ、持ち手にはとぐろを巻いたヘビが象られています。
印分の読み方は諸説ありますが、現在では「かんのわのなのこくおう」が一般的です。
また「奴国王」は「なこくおう」とも読まれています。
奴国とは、弥生時代に形成された国のひとつで、現在の福岡市博多区から福岡県春日市あたりに展開していたと考えられ、春日市の須玖岡本遺跡がその中心地とみられます。
的な内容でした。
金印の説明動画
また曲がった先にはDVDの上映。
そこでは金印が発見されたルーツを紹介する動画が流れていました。
内容は福岡市博物館のHPに記載されている内容と同じような編成でしたので、まず引用します。
金印は江戸時代、博多湾に浮かぶ志賀島(しかのしま)で農作業中に偶然発見されました。その後、筑前藩主である黒田家に代々伝わり、1978年に福岡市に寄贈されました。
金印に刻まれた「漢委奴国王」の五つ文字からは、漢の皇帝が委奴国王に与えた印であることが分かります。そして中国の歴史書『後漢書』には、建武中元二(57)年に、光武帝が倭奴国王に「印綬」を与えたことが書かれており、この「印」が志賀島で見つかった金印と考えられるのです。
さらに唐代に編纂された『翰苑(かんえん)』には「紫綬(しじゅ)」とあり、光武帝が与えた印の鈕(つまみ)には紫色の綬(じゅ)が結わえられていたことがわかります。 漢では官位につくと、文書を送る際に使用する印が与えられました。この印章制度を外交政策にも適応し、異民族の王にも官位と印綬を与えることによって皇帝を頂点とする秩序に組み入れようとしました。鈕のかたちは与えられた民族の領土によって異なります。漢帝国内の皇太子や高官などには亀の鈕の印が与えられますが、匈奴(きょうど)などの北方諸民族の王には駱駝や羊の鈕、蛇の鈕の印は南方の民族に与えられました。日本列島は南方の国と考えられていたようです。また、蛇の鈕をもつ金印としては中国雲南省の石寨山(せきさいざん)の6号墓で出土した「滇(てん)王之印」が知られています。
福岡市博物館HPより
要約すると
金印は農作業中に偶然発見され、黒田家藩主が「これは凄い発見なんじゃ?」と部下に指令して、詳しく調査。
すると中国の文献に、その当時金印が送られた記述と合致していたため、歴史的発見となったそうです。
詳しい文献まで覚えられませんでしたので、悪しからず。
金印の展示
いよいよ本物の金印とご対面。
薄暗いブースの中央に、ライトアップされた金印。
手で触れないようアクリルの箱の中に入り、印面は鏡に映し出されて、こちら側からも見えるようになっていました。
が、かなり小さいし箱の距離もあって、実際に彫刻面まではっきりと見ることはできませんでした。
とはいえ本物だけに許された、圧倒的な存在感と迫力は、吸い込まれるだけの力に満ち溢れていました。
実際の展示状態は、山梨県立博物館のTwitterに掲載されていましたので、ご紹介しておきます。
【金印特別展示終了】
— 山梨県立博物館 (@kaiseum_ypm) March 21, 2023
本日、国宝「金印 漢委奴国王」(福岡市博物館蔵)の期間限定展示が終了しました。多くのお客様にご覧いただき、ありがとうございます。
明日22日(水曜)は休館日、次の開館は23日(木曜)です。23日から金印複製(東京国立博物館蔵)を展示します。引き続き印章展をお楽しみください。 pic.twitter.com/kgbJacofnm
他にも様々な展示物がありましたので、タイトルのみご紹介します。
第1章【日本における印章のはじまり】
第2章【戦国大名のハンコ行政】
第3章【書画におけるハンコ文化】
第4章【江戸〜明治時代のハンコ文化】
第5章【山梨の印章産業と印章文化】
それぞれに全国各地から集めた貴重な資料も合わせて展示されていました。
それらは博物館内、ミュージアムショップで販売されている「印章 刻まれてきた歴史と文化」に記されていますので、ご興味のある方はぜひ。
最後に
こちらはブース入り口の外に飾ってあったレプリカ。
ちなみに場内は予想以上の混雑で、なんとなく嬉しい気持ちになりました。
またあちこちで口々に印章についての会話が繰り広げられていましたが、かなり深い知識まで披露されている方もいて、やはり印章は日本人に深く根ざしていることを感じさせていただきました。
残念ながら祖父のように涙が出るような体験ができなかったのは、まだその域に達していないからなのかもしれませんね。
ですけど改めてその場に足を運び、改めて知った物語。
偶然に偶然が重なりその先に必然が見つかった物語は、人知を超えた浪漫のような何かがあると思えてなりません。
そんな気持ちを持ち帰ろうとレプリカを探しましたが、残念ながら・・・
残念なんでググってみると、福岡市文化芸術振興財団で購入することができるようです。
もちろん私は早速ポチらせていただきました。
届いたら店頭に飾りたいと思いますので、お近づきの際はぜひ。
ちなみに明日からは東京国立博物館蔵の複製金印が展示されているそうですので、合わせてご紹介しておきます。
詳細は山梨県立博物館のHPをご覧ください。