お客様とのやり取りで伺い、ハッと気がついた言葉です。
印鑑にはその人の人生が詰まっている
そのかたは事業を営まれる、大切なリピーターのお客様。
気心知れた仲ですので、気軽に深いお話も伺えます。
そんな会話の中でおっしゃって、ハッとさせられました。
印鑑って、その人の人生が詰まっていると思うんです。
だって大きな決断の時に捺すものじゃないですか?
もちろん良いことばっかりじゃなくて、色々悩んだこともあると思うんです。
でもその時決断してくれたからこそ、今の私たちがあるわけです。
そう思ったんで私は、亡くなって形見になった父の印鑑をお守りにいただいたんです。
もちろん使ったりすることはないんですけど、持っているだけで勇気をもらえるような気がします。
「人生が詰まっている」っていうフレーズは、私の心に突き刺さりましたね。
自分の印じゃなくて親のです。
つい、鈴印の前身の鈴木印舗の実印を取り出しました。
本当残念ながら、もう何の役にも立たない印章です。
でもこれを見ていると、色々と想像が膨らみます。
多分親父も、今とは違う悩みを持っていたんだろうと。
でも事業を進めるために、大きな決意をして捺印したんだろうと。
そういえば一緒に仕事をしていた時も、実印を捺す場面ではなぜか同席させられていたんです。
結構怖い顔して捺していたなと。
そりゃそうですよね。
だって実印を捺す機会はそうそうないですけど、その全てが人生を賭けた場面には間違いないですから。
きっと本人もドキドキしていたのかもしれませんね。
今ならわかるんですけど、その決断の場面を私に見せたかったんでしょう。
人が実印を捺すときはどんな気持ちでいるのかを。
そして自分たちの職業は、そういうものを手がけていることを、伝えたかったんだろうなと。
回数は少ないかもしれないけど、最も大きな決断を支えてきたのが実印です。
その場面で想いを込めて捺してきたのが実印です。
つまり人生が詰まっているんですね。
最後に
印鑑は分身だなどと言われます。
確かに本人がいなくなれば何の役にも立たないという点でも、その通りかもしれません。
でも確かにそこには意思がありました。
役目を終えて奉納するのも1つ供養です。
彫り直して代々継承されるのも良いと思います。
そこに3つ目のご提案をいただきました。
自分のお守りとしてそっと身近に置いておく。
無意識のうちに、私もその3つ目を行なっていたようです。
確かにそれはなんの役にも立たない小さな印章なんですけど、取り出すとなんともいえない大きな勇気をもらえるんですよね。