「へ〜そうなんだ〜。高いはんこ作る人って、ずっと見栄で作ってるモノだとばかり思ってました!」
あるお客様のお言葉でした。
だって言い方は悪いですが、見栄を飾るために買うのならもっと他に色々ありますモン。
人についつい自慢したくなるモノ、「い〜な〜」って憧れてもらえるモノ、そういうモノは世の中に色々あります。
一番分かりやすいのは、スーパーブランドと呼ばれるモノではないでしょうか?
身につけているだけでね、やっぱちょっと違うな、いいな!って思われるワケですよ。
つまり価値が既により多くの方に認められている商品、その商品はある種「見栄」を飾るために購入に至る側面もあると思うのです。
みえ【見え/見▽栄/見得】
《動詞「みえる」の連用形から。「見栄」「見得」は当て字》
1 見た目。外観。みば。「―を飾る」
2 (見栄)見た目の姿を意識して、実際以上によく見せようとする態度。「―で英字新聞を読む」
3 (見得)歌舞伎の演技・演出の一。俳優が、感情の高揚した場面で、一瞬動きを停止して、にらむようにして一定のポーズをとること。
goo辞書より
見た目を良くするのが「見栄を飾る」ことなのであれば、あまりに使用頻度の低い実印よりは、普段身につけるモノに投資された方が、より目的に近いのかもしれません。
ではなぜ、みなさんはいい実印を作るのでしょうか?
これはもうズバリ「信用を得るため」に他なりません。
繰り返し申し上げますが、実印は友達同士で見せ合う類いの品ではありません。
実際私自身も、あまり人に見せた記憶がありません。
ですからその方の横のつながりが動機で作るモノではない、ってことになりますね。
ではなぜいい実印を作るのか?
それは親だったり、会社の上司の方だったり、尊敬する先輩に言われるから作るのです。
「お前な、実印だけはしっかりしたの作っておけよ!」って言われて、なんかよく分からないけどその言葉に従い、しっかりしたモノを作るのです。
つまりその方の縦のつながりが動機で作るモノになります!
それが結果、その捺印の際に「この方はしっかりした系譜を持った方である」と認識されるのです。
ちょっと見方を変えましょう。
私はまだまだ40歳に満たない社長です。
ですから新たな取引を開始する時は、当然多少警戒されることもあります。
しかしおかげさまで鈴印は創業以来80年続いております。
なので私個人だけでは不安でも鈴印の名前で「あ〜あの駅前のハンコ屋さん」ってことで話がスムーズに進む、そんな事も実は多くございます。
私にたいした力量があるワケでもないのに、長く続くお店の社長ってだけである程度信用されるんですよ。
長く続く系譜を踏んでるって思って頂けて。
そんなモンなんです。
名刺交換も然りでしょう。
どこの誰か分からないと不安ですから、どこのどんな人なのかを、相手は知りたいと思うのです。
そしてそれが契約の規模が大きければ大きい程、重要になってきます。
その方の育ちや肩書きを知りたいのです。
これが会社としての採用なら、履歴書でおおまか知る事ができますが、大きな契約だからってお客様に履歴書を書いてもらうワケにはいきませんからね。
つまりそれが実印の役目になります。
役所に印鑑登録をして、その方が地域の住人であることを証明してもらいます。
しかし役所がせっかく証明してくれたのに、その根拠となる実印が三文判だったら相手は何となく不安に感じます。
これは日本人独特の感覚です。
昔の人は実印をものすごく大切にされました。
そして現在でもものすごく重用視される方が、契約の場面では多くいらっしゃいます。
しかしながら実印の価値は、多くの方に広めるのでなく、自分の大切な人間のためにのみ伝えてきた文化なのです。
だからその方の育ちや肩書きを表す、つまりは隠れた「信用」になり得るのです。
私も実際社長としての捺印の機会は多くあります。
その時いつも、親父から伝えられてきたこの「信用」という言葉が頭をよぎります。
分かりやすく言うと「どうだ!」って思いなんですが・・・
「確かに鈴印は長く続いてます。
そして私はその後継者です。
確かに若いですが実印や銀行印は大切であるという、日本の大切な文化をきっちり継承しております。
たいした能力はありませんが、その文化は大切にしております。
だからこれだけ立派な実印を使っております。
『どうだ!』と。」
信用とは、お金だけで得られるものではないです。
長年積み重ねてきたその方の実績、それが備わってはじめて信用となりうるのです。
そのせっかくの信用も、伝えなければ伝わりません。
つまりハンコはあなたの見栄を飾るために作るモノではなく、あなたの信用を伝えるために作るモノなのです。