印鑑の書体にはいろいろな種類があります。
そして意外かもしれませんが、長い歴史の中ではファッションのようにトレンドがあります。
ちなみに祖父の頃は篆書がほとんどで、親父の代で印相体が出てきたそうです。
とはいえまだまだ当時は篆書が主流で、私の代になってから印相体をオススメするようになりました。
ところが最近また、この歴史が繰り返され以前い戻ってきていることを感じています。
そのため今回新たに、一番歴史ある書体を追加します。
実印書体に「札型篆書」(お札の総裁之印と同じ書体)を追加しました
書体名は篆書札型とさせていただきます。
なんとなく似ているのがお分かりいただけますでしょうか?
そして今回、書体一覧にも篆書札型として追加しました。
右上が篆書札型。
他の篆書体との細かい違いについては後述しますが、まずはパッと見の印象でご判断ください。
左上の「篆書」から下に向かって「印相体」→「SK印相体」と複雑になっていくのに対して、篆書札型に向かう横のラインは非常にスッキリしていきます。
当然おひとりごとに名前が違いますから入る文字は変わりますが、冒頭の画像「鈴木延之」と「総裁之印」の雰囲気が似ているように大きくイメージが変わることはありませんのでご安心ください。
直感で「これいい!」って思われた方は迷わなくて大丈夫ですよ。
では次にこの新しく追加した書体の詳細についてお伝えしていきます。
篆書札型と他の篆書との違い
まず大きく分けると以下のようになります。
篆書体 | 細篆書体 | 篆書札型 | |
文字の太さ | 太い | 細い | 中位 |
枠の太さ | 細い | 中位 | 細い |
上下左右の空間 | 狭い | 中位 | 広い |
つまり「文字の太さ」と、「枠の太さ」と、「上下左右の空間」の3つの要素によって変えています。
また細かい部分で作り手目線でお伝えすると以下になります。
- 篆書体は「直線を基調とし、うねりを強めにし、大きく見えることを意識」
- 細篆書体は「極限まで線を細くした直線を基調とするが、篆書体よりも曲線を動かして線を強く見せることを意識」
- 篆書札型は「一番直線的な文字で、曲線を極力抑えることでスッキリした中でも力強さを意識」
同じお名前でも文字の太さや空間に応じて、無理なく綺麗に収まるよう意識して彫っていきます。
書体として一番古いのは篆書札型
こちらは予備知識としてご紹介しておきます。
今回新たに追加した篆書札型は、数ある中でも一番歴史の古い書体になります。
篆書札型には「総裁之印」と彫られていますが、こちらは篆刻家の「益田香遠(ますだこうえん)」さんが1888年(明治21年)に彫ったものです。
当時それに少し変化を加えたものが、細篆書体でした。
親父の話によりますと、昭和初期は篆書札型と細篆書が主流だったそうです。
そこに1970年頃に印相体が誕生し、太い線で隙間なく大きく彫るスタイルが人気となっていき、それに合わせて篆書体も太く大きくなっていったとのこと。
その印相体が今では主流になり、一方でルーツでもある篆書札型に人気が集まるようになったのは、歴史は繰り返されることの証明かもしれません。
本当に良いものは繰り返されるのでしょうね。
最後に
店頭では「お札と一緒の彫り方」という点で、即決されるお客様が多い篆書札型。
特に贈り物であれば、そんな物語と一緒にお渡しいただくこともできます。
またPCフォントで作る場合、札型のように四隅を大きく広げて彫ると驚くほど弱々しくなってしまいます。
そのため手書き+手彫りならでこそ可能とする書体でもあります。
これだけ印相体が主流になった現代だからこそ、逆にこのクラシカルな書体に人気が集まるのもわかる気がします。
私自身も新鮮で魅力的ですから。
そして何より「お札と同じ」このパワーワードは魅力に満ち溢れているような気がします。
もしどの書体にするかでお悩みであれば、選択肢の1つに入れてみてください。
「篆書札型」はすべてのフルネーム印に対応します。
現在、全フルネーム商品の書体選択を1つ1つアップデートしています。
対応が追いつかない商品もありますので、その場合はご注文の際に備考欄に「篆書札型希望」とご記入してください。