手作りの印章を彫る際に欠かせないのは、印稿と呼ばれる設計図です。
古く長い文字の歴史の中からそれぞれのお名前と書体の組み合わせによって最適な文字をセレクトし、印鑑にするための最初のデザイン。
唯一無二を守る上ではむしろ、手彫りよりもこの手書き文字の方が重要です。
最初の設計図が規格のフォントじゃ、誰が彫っても同じになっちゃいますからね。
そんなワケで鈴印では初代より、この手書き文字を大切にしてきました。
ちなみに私の親父は「この文字こそお店の命」として、全て大切に保管していました。
膨大な数になっていますが全てファイリングし、これらは今では迷った時の私の大切な指針にもなっています。
その手書きの判下を、この度一新することにしました。
判下に使っていた用紙の変遷
この判下は私も修行時代から日々書いていましたが、その当時はあまりコストが掛からないように練習は一般的なメモ帳やらカレンダーを切ったものを使っていました。
そして本番の時は、メモ帳の一番下の台紙の硬い部分。
これは書いては消してを墨と朱墨で繰り返すため盛り上がっちゃうんですが、ペラペラの紙だと墨の重みに耐えられなかったり、水分で切れちゃったりするんですね。
そのために本番では硬い紙を使用していました。
鈴印においては親父の場合、上記で書きましたように自分たちが彫るための設計図として使用していましたから、やはりメモ帳を使っていました。
ところが私自身、ある時ふと思いました。
「もしかして、この判下も含めてお客様からお代をいただいているのでは?」
「ご注文の際は同じお苗字でもその都度書いているワケだから、唯一無二をうたう上では全てお渡ししちゃった方が、過去の比較もできて違いが分かるのでは?」
そんな感じのことを思いつき、それから全てお渡しするようにしていました。
自分たちで使うものとお客様にお渡しするものでは、当然色々変える必要があります。
どうせなら格調高く見えるように、メモ帳よりは高級紙に。
そんなワケでその時期からは、安いメモ帳からノーブルのメモ帳に変えました。
紙が良いとテンションも上がり、またより丁寧を意識するようになって、仕上がりも良くなりました。
そんな折、同業の方のブログなどを拝見していますと、真逆の黒紙に白文字で書いていたんです。
この印稿って私が習っていたのは黒い紙に朱墨で書いて、捺印したように朱が見えるように、またその朱を目立たせるために台紙も墨で黒く塗ったりしていました。
なのにその方は、黒紙に白で書いていたんです。
「白って何使ってんだ?」
当然そんな疑問が湧きますから思い切って聞いてみたところ、快く教えてくれました。
そのまま全てを同じくするのは諸条件のため難しかったんですけど、そこに鈴印流アレンジを加え、ついに完成しました。
最後に
ただ紙と筆の色を変えただけなんですけど、実際にそれぞれの道具が揃って書き出してみると、見た目の良さと紙の質感と合間って、すっごく楽しい!
やはり仕事は少しでも楽しく行いたいですからね。
今後は印章をご注文いただき、イメージチェックの校正をお出しする際や、またお任せいただいたみなさまにもお付けしていきます。
1つ1つ手作りの証が、見た目もこんなに進化しました。
みなさんのテンションも、ちょっとだけ高まっていただけましたら嬉しい限りです。