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刃物の角度を変えてます

  1. 手彫りと手書き
  2. 112 view

ちょっとしたこだわりの話です。
また、みなさんにはあまり関係ないネタで恐縮です。

 

刃物の角度を変えてます

上記の写真は、印章を彫る最後の工程、いわゆる「仕上げ」作業に使う「判差し」と呼ばれる刃物です。

上下を見比べていただくと、上がやや鋭角に尖っていて、下が鈍角です。
本当、微妙なんですけど、、、汗

上:柘植用
下:象牙用

って使い分けてるんです。
鋭角な方が、その名の通り切れ味鋭く削れますが、耐久性に劣り、すぐに研ぎ直さないといけないんです。
鈍角な方は逆で、切れ味は劣りますが、耐久性に優れます。

ならお客様からしたら鋭角にしてほしいと思うかもしれませんが、これがそう一筋縄ではいかんのです。
例えば思いっきり鋭角にした場合、一刀一刀ごとに見る見る切れ味が劣化していくので、全く仕事が進みません。
逆に鈍角にしすぎると、ちまちま削るようになり、こちらも全く彫刻が進まなくなっちゃうんです。
なので、最適な切れ味と耐久性のバランスを取った、自分の使いやすい角度を追求する必要があるんですね。

ちなみにこの角度の好みは職人さん一人一人全く異なります。
親父が使っていたのと比較すると・・・

上が親父の判差しですが、かなり鋭角です。
一緒に仕事をしていた頃、一度だけ交換したことがあるんですけど、お互いに「使いにくっ!」って言ってました。
また職人時代は多くの職人さんがいましたけど、ワタクシはその中でもかなり鈍角派でした。
まあ人間が鈍いので、刃物も鈍い方が相性が良いのかもしれません♡

ちなみに刃物を印材の相性を決めるもう1つの要素が、鋼の硬さ。
象牙用の判差しは、親父からもらって自分の角度に変えたものを使っています。
理由として昔の鋼の方が硬かったから。
硬いと研ぐのは驚くほど難しくなるんですけど、きっちり研ぎ上がると自分の技量が上がったかのような錯覚を覚えるほど扱いやすく、またいくら使っても切れ味が全然劣化しないんですね。

今回は、そんな裏側のお話でした。

 

最後に

他の職業の方って、自分で刃物を研ぐ方ってどれくらいいるんでしょうかね?
結構研ぐのは研ぐプロに任せるって方も多いのかもしれません。
ただ私たち印章業においては、みなさん自分で研ぎますね。
なぜか?
代わりに研いでくれる人がいないから、、、涙

もしかして聞いてないだけで、頼んだらやっていただけるのかもしれませんね。
まあそれでも自分で研ぐと思いますね。
だってその方が簡単だから。

今更になっても思うんですけど、刃物ってきちんと研ぐとびっくりするくらい消え味が良くなるんですよ。
すると彫ってても楽しくて仕方なくなる。
それはまるでお気に入りのペンだと、書くことがガンガン進むように。
そして自分でそれを作り出せる楽しさも、きっと刃物を研ぐ作業には含まれるんでしょうね。

写真を撮るため久々に親父も刃物を使ってみました。
自分の考えも変わってきてますから、今ならどう思うんだろう?って。
驚きました。

すげー使いやすい、、、汗

これだから職人は辞められないですよね。
こんなワタクシでも、進化してました♡

 

鈴印

〜印を通してお客様の価値を高めたい〜

鈴木延之
代表取締役:株式会社鈴印

1974年生まれ。
A型Rh(+)

1932年創業、有限会社鈴木印舗3代目にして、現プレミアム印章専門店SUZUIN代表取締役。専門店として、印章(はんこ)を中心としたブログを毎日発信。本業は印章を彫る一級印章彫刻技能士。
ブログを書き出したきっかけは、私の親父が店頭で全てのお客様に熱く語っていた印章の価値や役割そして物語を、そして情報が散見する中で印章の正しい知識を、少しでも多くのみなさまに知っていただきたいから・・・
だったのに、たまに内容がその本流から全く外れてしまうのが永遠の悩み♡

一級印章彫刻技能士
宇都宮印章業組合 組合長
栃木県印章業組合連合会 会長
公益社団法人全日本印章業協会 ブロック長

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