みなさんが毎日手にする日本銀行券、いわゆるお札ですね。
最近は政府主導によるキャッシュレス推進で、以前と比べると使用頻度は多少減ってきているかもしれません。
とはいえ世界一安心な日本のお札ですから、まだまだこれからも残り続けるでしょう。
さてそんなみなさんにとってなくてはならない、また切っても切れないお札に、実はハンコが押してあることはご存知でしょうか?
しかも新しいお札も古いお札も全く同じ印が。
2014年2月18日に書いたブログですが、2019年11月8日にリライトしました。
その後内容に関してテレビ局をはじめとした多方面からお問合せをいただき、出展等の曖昧な部分が確認できたため2023年9月27日に再びリライトしました。
お札に押してある印にはある意味が込められていた
表の「総裁之印」で、お札の流通を願う価値を証明する
私が小さい頃によく見ていたのは聖徳太子が描かれていたお札でした。
この右下には、きちんと印が押してあります。
ありますね。
彫刻文字は「総裁之印」
之 | 総 |
印 | 裁 |
↑このように配字されています。
これは別名「流通印」と呼ばれ『日本銀行より発行したお札は全国隅々まで行き渡るように』との願いが込められているそうです。
上記訂正がリライト理由の1つです。当時Wikipediaに書かれていたため引用しましたが、現在その表記は確認できておりませんので、訂正とさせていただきます。
上記訂正がリライト理由の1つですが、当時Wikipediaに書かれていたため引用しましたが、現在その表記は確認できておりませんので、訂正とさせていただきます。
代わりに、文鉄・お札とコインの資料館様のサイトを引用させていただきます。
ごく初期の日本銀行券を除きおもて面に捺印されている、この判は1888年(明治21年)に発行された改造5円券より用いられています。
日本銀行券は私たちにとって日本銀行にお金を貸し付けている代わりに、同等の価値として市中で行使できる借用証、小切手のようなものです。
今でこそ、不換紙幣(金や銀に兌換できない)ですが、かつては金貨や銀貨と交換できました。金や銀はその価値が目で見てわかるもの、紙幣はただの紙に金額を印刷したものにすぎません。その正当性を証明するために日銀総裁が確認し、その価値を証明するという意味合いで総裁の印が捺印されています。
紙幣はただの紙に金額を印刷したものにすぎません。
その正当性を証明するために日銀総裁が確認し、その価値を証明するという意味合いで総裁の印が捺印されています。
やはり肝心なところにはいつも印が登場します。
裏の「発券局長」で、お札の歯止めを願うを流通させていることを証明している
表面同様、裏面にも右下に印が押してありますね。
彫刻文字は「発券局長」
券 | ||
長 | 發(発) | |
局 |
↑このように配字されています。
これは別名「歯止印」と呼ばれ『表面で願う流通を裏面で発券局長が歯止めをかけ、再び日本銀行に帰ってくるように』との願いが込められているそうです。
上記訂正がリライト理由の1つです。当時Wikipediaに書かれていたため引用しましたが、現在その表記は確認できておりませんので、訂正とさせていただきます。(2023年9月27日)
代わりに、文鉄・お札とコインの資料館様のサイトを引用させていただきます。
1942年(昭和17年)に戦局の悪化に伴い大日本帝国の中央銀行である日本銀行への大日本帝国政府の権限強化を目的とした改組が行われ、その際に発足しました。戦時中の一部の日本銀行券を除き裏面に捺印され、1943年(昭和18年)に発行されたい10円券などより用いられています。
日本銀行発券局とは紙幣の発注や発行、円滑な流通、還流してきた銀行券の監査、流通にそぐわない紙幣の処分を担当する部署でいわば銀行券の一生を担っています。流通中の紙幣に捺印されている判はその発券局が発行し、流通させていることを証明していています。
想像を広げれば、上記の今回訂正した部分にも通じる内容が書かれています。
こちらもお札という紙に発券局長が確認し、流通を証明するという意味合いで捺印されています。
昔は手で押していたのかも
鈴印には古い紙幣がたくさん保管されています。
私の祖父がコレクターで、代々継承されて残っているんですね。
お札の年代やデザインが変わっても、位置は違えど印影は変わる事なく使い続けられています。
だから今お使いのお札をご覧頂いても同じ印が押してありますし、古いお札も同様です。
そして驚いたのは、印影が滲んでいたり曲がっているものがあることです。
分かりますでしょうか?
上左の「発券局長」は、やや右に傾いてるし、上右の「総裁之印」は右側に傾いて押してるのか、右側が太い。
下の「発券局長」は特に「発」が滲んでいます。
総裁之印は、今の印章の書体のルーツ
日本銀行券に使われる印章の書体は全て「篆書体(テンショ)」で、篆刻家「益田香遠(ますだこうえん)」さんが1888年(明治21年)による作品です。
上記訂正がリライト理由の1つです。親父から聞きうけていた内容を根拠としていましたが、残念ながら裏付ける資料が見つかりません。
今回新たに国立印刷局に問い合わせましたが「誰が彫ったのかは分からない」との回答でした。
長年業界内ではよく耳にしてきた話でもあり資料がないだけで違うとまで断言はできませんが、念のため訂正いたします。(2023年9月27日)
上の書体見本は右から、篆書・印相体・古印体となっています。
3つと総裁之印を比較すると、篆書に近いのが分かると思います。
鈴印見本の篆書と「総裁之印」の違いは、外枠と文字との上下左右の空間です。
鈴印見本は空間が少なく大きく配字しており、総裁之印は空間が広く小さめに配字されています。
現在の主流は印相体ですが、だからこそ逆に総裁之印の印影は非常に新鮮です。
最後に
お札の印。
案外見落としがちですが、どの紙幣にもきちんと印が捺してありました。
日本においては、大切な書面には必ず印章が捺されていた証拠の1つでもあります。
正しい物には正しい印がある。
日本のアイデンティティでもある印が、お札を通してもよく分かりますね。
以下追記(2023年9月27日)
先日この札型の印を見本とした書体を鈴印の印章具「書体選択肢」に加えました。
詳細は以下のブログをご覧ください。