今朝、こんなニュースが目に入りました。
卒業証書に違う学校の公印が・・・児童が気づきミス発覚、印刷業者が取り違え
卒業証書の公印ミス、児童が気づく 2校、業者取り違え
簡単にまとめると、卒業証書に押す公印(角印)がそもそもただの印刷で、それを他の学校のと取り違えちゃったってお話。
まあできればブログに画像使って書きたいんですけど、なんかあってもイヤなんで♡
卒業証書の公印を間違えた?で思うこと
本当がっかりするコトばかりですわ。
でも一概に印刷業者さんだけを責められるのか?って話ですよ、これ。
だってね、前提としてあるのは学校や役所などの納品物には必ず相見積もりや入札があります。
税金を使う公の仕事ですから、他より安く作ったって前提が必要。
そして1円でも安い方に発注します。
つまりここで一番に問われるのは、正確さではなく、安さ。
コストを抑えるには原材料と人件費を抑えないといけない。
だからできるだけ手間をかけずに安く作る。
結果、思いを込めて入念かつ慎重な作業なんてできませんからミスは出やすくなりますし、この印刷業さんに至ってはきっと、受注は取れたけどミスで赤字だし、会社の評判は落ちるしで、踏んだり蹴ったり。
とまあ、あくまで想像の世界ですけど、大変でしたね、ってのが最初の感想。
で、ここからは印章店としての感想を書いてみたいと思います。
なぜ公印は横文字が多い?
今回取り違えた公印も横書きでした。
で、すみません、先に結論を言うと理由は知りません。
通常私たちが角印を彫る場合、縦書きで右上からのレイアウトになります。
でも不思議と公印って左上からの横書きが多いんです。
これってただの慣習なんでしょうかね?
でね、今回の卒業証書も含めて公文書って、縦書きが多いでしょ?
いまだに正式な書物は縦書きが必須、なんて言う人もいますよ。
それなのになぜその印を横書きに彫るのか?
普通に考えておかしいでしょ?
文書も縦書きが多いなら、印も縦書きの方がバランスがいいんじゃないのか?
それにこの公印に使われた、一般によく読めないと言われる「篆書」
これはもともと縦長の文字だから、文字数が合わない時にも縦書きだとレイアウトを整えやすい利点ってのもあります。
だから私個人的には絶対的に縦書きがオススメなんですけどね。
なぜ公印が生徒名の上?
これは最初のパッと見の第一印象。
「公印の位置おかしくない?」
で、色々ググってみました。
するとまるでスタンダードであるかのように、生徒名の上に学校の印が押してある見本が多いんですね。
これってただ単にスペースが空いてるからここに押しちゃえ!って感じなんでしょうか?
おかしいでしょ?
一番の主役の上に、送る側の学校の印が押してあるって。
前にもブログで書きましたけど、角印の本来の意味は偽造防止です。
つまり「この卒業証書は適当にその辺で勝手に作ったモノではなく、学校が正式に作成した卒業証書です」という意味で文字の一部に重ねて角印を押します。
だから本来なら卒業証書の最後に、
富山市立山田小学校
校長 横山隆宣
と2行に分けて、それぞれの一部に重ねて押すべきです。
まあそもそも公印が印刷じゃ、その意味すらありませんけど♡
なぜ公印を押さない?
理由は1つしかないと思います。
費用と手間の削減。
印刷で済ませれば2色刷り分の印刷代がかかるだけで済みますけど、印を作るとなると別に費用がかかります。
また公印を卒業証書1枚1枚押すのはとても労力のいる作業です。
でも多くの企業なんかでもそうですが、大切な書類は相手を思い、気持ちを込めながら1枚1枚押している所も多いです。
大変だけれども手紙を書くのと一緒で、手間暇かけた分相手に思いは伝わります。
とは言えハンコは押すだけですし、ちゃんと手で彫った印と良い朱肉があれば、誰でも簡単に綺麗に押せます。
何も渾身の力を込めて押す必要なんかないんです。
あっ、でもコストを極限まで抑えて、機械で彫った大きな角印ははっきり言ってまず写りませんからね。
印刷よりも手間もコストも余分にかかり、結果は最悪って側面もあったりしますね。
まあ何でもそうですけど歴史や文化を重んじる場面で、下手にケチるとロクなことにならないんですよ。
まとめ
基本的に鈴印ブログではこういう否定的なコトは書かないようにしていますけど、今回はどうにも言いたくなってしまいました。
だって一番の被害者は生徒さんや保護者のみなさんですよ。
6年間毎日毎日一生懸命通って無事卒業できた生徒さん。
そのお子さんのために一生懸命寄り添い、こんなに成長したんだと涙がこみ上げる親御さん。
その証としてお一人お一人に手渡される卒業証書。
いただいた側はそれをとても大切にし重きを置いているからこそ一言一句読んで、文字の間違いに気がついたんだと思います。
だからそれを用意する側に、何の想いも気持ちも入っていないって悲しいなって。
コストと手間だけで全てが判断されてしまう。
とは言え、何もお金をかければいいってコトじゃなくて、そういった大切な瞬間はせめて気持ちと想いだけは込めてほしいなって思います。
だってご家族にとって、人生に一度しかないかけがえのない大切な瞬間なんですから。