私たちは印章を彫るのが仕事です。
一方で実際にお客様がご使用になる用途や環境に関しては、あまり詳しく知らないのが実情です。
なぜなら印章という商品の特性上、お渡しした後の接点が少ないからなんですね。
つまり購入後のお話を伺う機会が少ないんですね。
なのでその後のお話を聞けるのは本当に貴重で、また嬉しい時間です。
今回は通関士の方から実際にお伺いすることができました。
通関士の方の印章の効能
「こちらで通関士印を作らせていただいてから、不思議なことが続いていてびっくりしています」
そんなお言葉とともに、久しぶりに遠方からふらりとご来店いただきました。
伺うと、あの日以来驚くことの連続だったそうです。
その内容をご紹介する前に、前提として通関士さんのお仕事をご紹介しておきます。
物品の輸出や輸入の際に、荷主さんの代わりに関税とそれに付帯する納付の代理申請をするお仕事。
ちなみに管轄は税理士さんと同じ、財務省。
つまり重要な書類を日々やり取りするのがお仕事です。
印影が違うと、同じ物品なのに審査が通った
その通関士さんは2つの印章をお持ちだそうです。
1つは昔から使っている会社支給のボロボロのゴム印。
1つは先日、鈴印で作っていただいた通関士印。
具体的には、2件書類があり、荷主さんも同じで、同じコンテナ貨物で、全く同じ2件の貨物でした。
1件はボロボロのゴム印を捺して提出したんですが、書類審査で終わらず現物検査へ。
もう1件は鈴印さんで作っていただいた通関士印を捺したら、驚いたことに通っちゃんたんですよ。
両方とも添付して提出した書類は同じなのに・・・
つまり税関審査の際は、印影が信用の対象になっていることがわかります。
私の経験でも、昔は銀行で融資を受ける際に実印で担保が変わるとか、営業職の人は実印を見て相手を見定めるというお話は聞いたことがありますが、ここまではっきりとした具体例は初めて耳にしました。
印影が違うと、審査を通るのが早くなった
税関で審査を受ける際には、何重ものチェック体制が敷かれているそうです。
例えば
1.書類審査
2.見本確認
3.大型X線装置での確認
など(私が聞いて書いているので若干違っているかもしれませんが)
ところがこちらの印を捺すようになってから、これも驚いたんですが、ほぼ1.の書類審査だけで完了するようになったんです。
私たちの仕事では印影が大切なのはわかっていたのですが、まさかここまでとは思いませんでした。
この事例からも、税関においての印影の信用度の高さがよくわかります。
これもよくブログに書いている気がしますが「神は細部に宿る」「一事が万事」
つまり自分の分身でもある印影をきっちりと丁寧に捺すことで、相手から丁寧な人だと信用されるのでしょう。
小さな印章、大きな役目。
まさにそれをリアルに体現していただいたように思いました。
最後に
今回の通関士様は、ご注文の際にはこのようにお話ししてくださってました。
雑では税関官署に失礼ですから。
なのにこれまでは会社支給で、他の通関士ともさほど変わらない印を使っていました。
これでは印を捺す仕事として、自分が薄いように感じていて、なので納得のいく印を作っていただきたくて来ました。
印影がくっきり綺麗に写ることは、信用度を上げることに通じます。
綺麗に写るためには、丁寧に手がけた印と、きちんとした朱肉が欠かせませんし、一方がダメだと成立しません。
私たちの使命もまた、このことだと教えていただきました。
ありがとうございます。
冒頭でも申し上げた通り、私たち作り手は、あまりこういったお話を聞く機会が少ないのが実情です。
他にも体験談などございましたた、ぜひ教えてください。
みなさんが思っている上に、私たちとってものすごい活力になっています。