最近では、印章を掘り直して再利用される方が増えています。
印材としてみた場合でも、昔の材料は質が高いですし、良いものは長く使っていくべきです。
でもご注文されるみなさんはそのような物理的な問題ではなく、全く違う理由でご依頼されます。
印鑑の彫り直しは、意思を継承すること
今回は私のよく知る友人からのご依頼でした。
それは私もよく知るお父様の形見。
ふとご来店いただきこんな話になりました。
そうして出されたのは、非常に質の高い象牙の印でした。
ネットでそんなサービスがあることを知って、どうせなら鈴木さんに彫ってもらいたいと思って。
その友人は以前、かなり良い実印を作っていたので、誰が使うのかを尋ねると、弟さんが使いたいとのこと。
私自身、色々と想像しました。
以前からブログ等でも書いていますが、良い印を作るきっかけは友人などではなく、親や先輩であることが多いんです。
これは商品の性質上なのかもしれませんが、印章ってあまり人に見せびらかしたり自慢するものじゃないですよね?
それに友達に「良いの作った方がいいよ」なんてのも余計なお世話になります。
でも親御さんは違います。
印鑑を捺すときは、人生の中でも特に重要なターニングポイントです。
捺さなければ始まらないですし、間違って捺しては大変なことになる。
だから人生の決断を間違えないように、ちゃんとした印を贈ったり勧めたりするのって、親御さんや親身な先輩なんです。
以前友人がとても立派な実印を作ってくれたこと、その親御様が使っていた実印は、それに匹敵する素晴らしいものだったこと。
そして弟様が継承したいとの思い。
そこには親御様の意思が脈々と継承されていることを感じました。
最後にこんなLINEをいただきました。
弟は判を押すたびに親父を思いだして育てて貰った感謝する事でしょう。🤗
凄く良い形見になります。🙏
最後に
印鑑は自分の分身と言われます。
これは印影がご自身の意思の担保、書面に書かれた内容を認めたという意思を相手に預けるからです。
また一方で、印章本体にも魂が宿っていて、その時々の想いもそこに詰まっているんですね。
印章を彫り直して使うことは、思い出だけでなく、持ち主の意思も継承することを教えていただきました。
彫り直した印章は、捺印の際に、応援してもらったり助けてくれたりと、強い味方になってくれることでしょう。
私たちはその想いにお応えできるよう、精一杯大切に彫り上げさせていただきます。