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ホテルマンは時計や靴で人を見ますが、契約者は実印で人を見ます

  1. 鈴印と人

第一印象が人と人との関係においてどれほど重要かは、多くの人が認識しています。
清潔感のある服装はもちろん、身につけているアクセサリーや、持ち物の一つ一つが、相手に多くを語ります。
海外でよく耳にする話として、ホテルのスタッフがゲストの時計や靴を見て、サービスの質を変えるというものがあります。
実際に私自身、海外旅行で高級な時計と靴を身につけた際には、他のそうではない旅行者と一線を画した待遇を受け、特別な感覚に浸ることができました。

しかし、こうした「見た目による判断」は、日本においても同様に存在するのでしょうか?
実は外見だけではなく、もっと深いレベルで私たちの社会的信頼性や品格を示す文化がここ日本にはあります。
それが「実印」です。
日本独自のこの文化では、実印は単なる印鑑以上の意味を持ち、その人の社会的地位や人格を象徴するアイテムとして重んじられています。

このように国や文化によって「人を見る」基準は異なるものの、共通しているのは第一印象が重要であるという事実です。
欧米では時計や靴がその人のステータスを示すアイテムであるのに対し、日本では実印がその役割を担っています。
では実際に実印が、日本のビジネスシーンにおいてどのような印象を与え、なぜこれほどまでに重要視されるのかを、詳しく見ていきましょう。

2015年1月15日に公開したブログですが、2024年2月7日に大幅リライトしました。

実印が相手に与える印象

日本では、実印は単に名前を示す道具以上のものとして扱われます。
契約書や重要な書類に押された実印は、その人の責任感、信頼性、さらには社会的地位までもが評価される瞬間です。
例えばある企業の経営者は、取引先の実印を見ることで、その企業や人物とのビジネスを進めるかどうかの判断材料にしています。
「実印を見ただけで、その人のビジネスに対する真剣度がわかる」と語る人も少なくありません。
具体的には今回、次のようなお話を伺うことができました。

カーディーラー勤務の方のお話

 

とあるカーディーラーに勤務される方は仕事柄、毎日契約を結ばれます。
するとある傾向が見えてきたそうです。

私は父から「実印と銀行印はあなたの分身だから、良いものを使いなさい」と言われてプレゼントされたので余計かもしれませんが、お客様の実印が大きくて複雑な文字な場合、それだけで緊張感を持ちます。
また逆もしかりで、あまり大きな声では言えませんが、どれだけ高価な身なりをされていても実印が安価なもの場合、その印象が優先してしまいます。
偉そうかもしれませんが、多分私は無意識にに実印で相手を見定めていると言えるのかもしれません。
でも決してそれが間違っているとも思えないんですよね。

宅建士のお話

宅建士の場合も同様に、家という高額な契約を交わされるご職業です。
やはり同じような印象をお持ちのようです。

実印は大切です。
なぜなら売買契約の、最終決断の意思だからです。
私たちの職業は契約後に多くの人が関わってきますので、お客様の決断が曖昧なものでは困ってしまいます。
正直申し上げて相手の方をどこまで信用できるかは私たちの直感に頼る部分も大きいのですが、多かれ少なかれそのご意思は、ご用意された実印と比例する傾向はあります。
やはりしっかりした実印をお持ちの方は安心できますよね。

これらの事例から営業のプロは、契約の際に実印から相手の真剣さや信頼性を感じ取ることができ、また契約に向き合う姿勢を感じていることがわかります。
実印は見た目以上に深い意味を持ち、相手に対する信頼感を築く重要な要素になります。
このように日本において実印は、単に契約を結ぶためのツール以上の意味を持ちます。
自分自身の信頼性や社会的地位を象徴するアイテムとして、相手に対して自己紹介の役割を果たすからです。
特に直接会って話す機会がない場合、契約書に押された実印がその人の「顔」となり得るのです。

最後に

これまでの話を通して、あまり表に出ない実印の側面を見てきました。
実印は私たちの社会生活において見過ごされがちながら、実は非常に重要な役割を果たしていることがお分かりいただけたかと思います。

日本独特のこの文化は、単に物事を正式化するための手続きを超え、私たちの人格や信頼性、社会的地位を象徴するものとして機能しています。
だからこそ自分に合った実印を選ぶことは、単に法的な手続きを準備する以上の意味を持ちます。
まさに自己表現の1つでもあり、また自分自身を尊重し、他者に対する敬意を示す行為でもあるのです。

私たちは日々の生活の中で多くの「印」を残しますが、実印は最も強力で、かつ最も大切な「印」です。
これを選ぶ過程においては、自分がどう見られたいか、どのような印象を与えたいか、そして最終的にはどのような人間でありたいか、ということを考える良い機会になるかもしれません。

実印はご自身の意志を形にし、社会におけるあなたの立場を強くするツールです。
適切な実印を選ぶことで自分自身をよりよく表現し、信頼と尊敬を築くことができます。
実印を選ぶ際はその重要性を心に留め、あなたの理想とする未来像を思い描くと良いかもしれません。
この小さな一歩が、あなたの社会的な足跡を形作る大きな一歩となるでしょう。

鈴印

〜印を通してお客様の価値を高めたい〜

鈴木延之
代表取締役:株式会社鈴印

1974年生まれ。
A型Rh(+)

1932年創業、有限会社鈴木印舗3代目にして、現プレミアム印章専門店SUZUIN代表取締役。専門店として、印章(はんこ)を中心としたブログを毎日発信。本業は印章を彫る一級印章彫刻技能士。
ブログを書き出したきっかけは、私の親父が店頭で全てのお客様に熱く語っていた印章の価値や役割そして物語を、そして情報が散見する中で印章の正しい知識を、少しでも多くのみなさまに知っていただきたいから・・・
だったのに、たまに内容がその本流から全く外れてしまうのが永遠の悩み♡

一級印章彫刻技能士
宇都宮印章業組合 組合長
栃木県印章業組合連合会 会長
公益社団法人全日本印章業協会 ブロック長

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