結婚記念品に実印の贈り物 ― 人生の節目に想いを込めて
結婚の記念に「実印」を贈る。
実はこれ、昔から選ばれてきた定番の品なんです。結納の品としてはもちろん、婚約や入籍、結婚記念日など、人生の節目に合わせて実印を用意される方が多いんですね。
単なる記念品で終わらず、これから先の大切な決断を支えてくれる。だからこそ、長い目で見ても喜ばれているのだと思います。
当ブログを初めて公開したのは2015年3月31日でした。その後、同じようなご相談を店頭でたくさんいただいたことから、2023年3月11日、そして2025年9月18日に内容を追記・更新しています。本稿では、結婚記念品として実印を贈る意味やタイミング、素材の違い、登録基準、実際にいただいたお客様の声までまとめています。
実印を贈る意味とタイミング

“実印”とは、市区町村役所で印鑑登録された、法律的にも認められた印章のこと。契約や相続、ローンなど、人生の“決断“の場面で使われます。
だからこそ「これからの人生を誠実に、責任を持って歩んでほしい」という気持ちを込めて贈られるのだと思います。
- 婚約成立のタイミング
- 結納の儀のとき
- 入籍や新しい姓の手続きを迎えるとき
- 結婚記念日(特に節目の年)
- 家の購入や出産など、これからの生活の節目
贈られる傾向

これまでのお客様とのやりとりから見ても、名字が変わる方に向けて、実印を贈られることが多い傾向があります。
「自分の名字になっていただくことに対する責任」という意味合いで用意されることも多く、実印が家族の絆を強くする気持ちとして表現されているのだと感じます。
結納の品に実印を

ここでは、実際に結納で実印を贈られたケースをご紹介します。
「結納」とは、結婚をきっかけに両家がつながることを祝い、贈り物を納め合う儀式です。やり方は地域や家ごとに異なりますが、要は相手のご家族に心を込めた品を用意し、その気持ちに応える行いなんですね。
結納金や指輪、時計といった品々に並んで、実印を選ばれる方も少なくありません。結婚を機に責任も変わっていくからこそ、「先々の大切な決断を間違えないように」と願いを込めて贈られるのです。
結納に実印を贈られた方の声

男性側のご両親から贈られたケース
「今度息子が結婚します。相手のお嬢さんがうちの苗字になっていただくわけですから、それに必要なものはこちらで用意したいと思うんです。」
女性側からご夫婦用に
「私自身これまでちゃんとした実印を持っていなく、また聞いたら夫になる方も持っていないそうです。せっかくの記念なので、2人にフルネームの実印を贈りたいと思いました。」
二度目のご来店で
「前に長男とお嫁さんの実印を彫っていただいて、それを結納の時に贈ったら相手のご両親もすごく喜んでいただいたんです。今度次男が結婚するんで、また来ました。」
こうしたエピソードからも分かるように、実印は意外と盲点。それだけにサプライズ性が高く、相手のご家族にも強く印象に残るようです。
実印を選ぶときに大事にしたいこと
素材と耐久性
実印は一度作ったら長く使うもの。だから素材選びはとても大切です。以下に代表的な素材をまとめてみました。
| 素材 | メリット | デメリット | おすすめの方向性 |
|---|---|---|---|
| 本柘(薩摩本柘など) | 軽く温かみのある質感/価格が手ごろで初めての実印にも | 摩耗しやすい/環境変化に弱い/重厚感では他素材に劣る | ナチュラルな見た目が好き/価格を抑えたい方 |
| 水牛 | 伝統的な風合い/重厚感あり/価格と品質のバランスが良い | 乾燥や湿度に弱くひび割れの恐れ/個体差がある | 天然素材の美しさ/伝統感を重視する方 |
| チタン | 非常に硬く摩耗に強い/耐水性あり/モダンな印象/手入れが楽 | 価格が高め/金属の重さや冷たさを好まない方も | 長く安定して使いたい/重厚感を求める方 |
| 象牙 | 美しい光沢と手触り/印影が鮮明/耐久性抜群/記念品として特別感がある | 非常に高価/希少性が高く入手困難な場合もある | 特別な節目の記念に/希少価値や美しさを重視する方 |
実際に店頭でも『思っていたより重いですね』『光沢がきれいですね』と、思った以上の違いに驚かれることが多いです。
素材についてもっと知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
サイズ(直径)
自治体の規定によりますが、実印は印影が8mmを超え25mm以内であることが条件とされるのが一般的です。
フルネームを刻む場合は16.5mmがバランス良く、男女問わず選ばれることが多いサイズです。
サイズについてもっと知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
刻印内容と書体
フルネーム・姓のみ・名のみ、いずれでも登録は可能です。ただし「実印=実名の印」という意味からも、フルネームで彫ると唯一性が高まり信頼度も増します。
書体は篆書体や印相体など、複雑で重みのあるものが好まれる傾向があります。
サイズについてもっと知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
手彫りか機械彫りか
手彫りはひとつひとつ職人が仕上げるため唯一性があり、高級感があります。機械彫りは比較的コストが抑えられますが、同じ物が量産可能ですのでご注意を。
サイズについてもっと知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
実印登録の決まりごと
実印を登録する際には、以下のような条件を満たす必要があります。自治体によって異なるため、必ず相手方の役所で確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 印影の大きさ | 8mmを超え、25mm以内の印面であること |
| 氏名の表記 | 住民票に記載された氏名(姓+名/姓のみ/名のみ)であること |
| 材質 | 変形しやすい素材や摩耗しやすい素材は不可 |
| 印影の明瞭さ | 輪郭が鮮明で文字が判読できること |
価格帯の目安
素材やサイズ、刻印内容によって価格は大きく変わります。
- 本柘や水牛など:およそ20,000〜40,000円前後
- チタンや象牙:50,000円以上
- 希少な象牙など特別な素材:100,000円以上
よくある質問
- 実印・銀行印・認印の違いは?
- 実印は役所に登録されたもので、公的な効力を持ちます。銀行印は銀行に届け出て使うもの、認印は日常的に押す印鑑で登録不要です。
実印にはなぜフルネーム彫刻が選ばれるの?
「実印」はもともと“実名の印”から来ているといわれます。契約の際に信頼度が高まること、偽造防止にもなることから、フルネームを選ばれる方が多いのです。
最後に
結婚記念に贈る実印は、単なる“品”ではありません。
これから先の人生を支え、節目ごとに立ち会ってくれる存在です。素材やサイズ、刻む文字を考える時間そのものも、大切な思い出になるでしょう。
この記事がみなさまの「贈ってよかった」「もらってよかった」につながれば、嬉しく思います。