結婚したばかりの幸せそうなご夫婦が、奥様の実印を求めてご来店されました。
話を進めていくうちに、ご主人様から思いがけない提案がありました。
ただし、お苗字だけやお名前だけでも実印登録は可能ですよ。
現在、ご主人様はお苗字だけの印を実印として登録しています。
そして結婚したことで奥様も同じ苗字になりました。
であれば夫婦共用にできるのでは?
さて、この提案は果たしてOKなのでしょうか?それともNGなのでしょうか?
2016年6月17日に公開したブログですが、2024年5月28日にリライトしました。
ご主人の実印で奥様は実印登録はできません
残念ながら、正解は×です。
当然このような疑問が浮かぶと思うのですが、ちゃんと理由があります。
この際は念のため実印を登録する市役所の市民課に尋ねてみたところ、以下のような回答が得られたからです。
では実際、印鑑登録の現場ではどのような流れで行われているかを見ていきましょう。
1.印鑑登録をしたい印章を、市役所窓口に申請書と一緒に受け取る。
2.役所では、印鑑登録の規則に則っているかの確認。
3.同一世帯の印影を照合する(ご家族全員の登録している実印を照合する)。
4.同じ場合や似ている場合は「紛らわしい印鑑」とみなし、登録を受け付けない。
ちなみに今回の事例は、宇都宮市印鑑登録の「登録できない印鑑」に該当します。
すでに同一世帯のほかの人が登録している印鑑
宇都宮市印鑑登録より
地方自治体によって細かい規則は異なりますが、基本的にはこのような内容になっています。
ただし作成前に念のため、登録する地方自治体に詳しく確認してください。
印鑑登録の背景と重要性
ここで少し印鑑登録の背景について触れておきましょう。
日本において印鑑は、個人の同一性を確認するための重要なツールです。
特に実印は、法的な文書や重要な契約の際に使用され、その効力は非常に強力です。
例えば、車や家の高額商品を購入する際の契約書には必ず実印が必要となります。
この実印を市役所で登録することにより、その印影が公式に認められるわけです。
しかし同一世帯内で同じ印影を持つ印鑑が複数登録されると、誰がどの印鑑を使ったのかの区別がつかなくなり、トラブルの原因となります。
また夫婦で争う事例も少なくありませんので、より慎重になる必要があるわけです。
そのような事柄を鑑みて、実印の登録に関しては非常に厳しいルールが設けられているのです。
最後に
実印は、お一人に対して一本です。
これが基本です。
例えば、「ここにご主人様と奥様の実印を押してください」と求められたとき、同じ印影では困りますよね?
実印を押す行為は、その人の意思の担保であり、「私は認めました」という意志を相手に渡すために実印を押すのです。
またフルネームを彫刻することで、お互いに分かりやすくなるメリットもあります。
一般に印は奥様が管理する場合が多いのでしょうか?
もしご家族全員が実印も銀行印も認印も苗字だけだったら、5人家族で15本。
もしそれが全て三文判だったら・・・
ゾッとしますね♡