創業者と後継者
私は三代目、つまりは後継者になります。
三代目なんて肩書きを持っておりますと、こんな風なお話になります。
「跡継ぎさんは大変じゃないですか?創業者であれば自分の好きなようにできますけど、跡継ぎさんじゃそうはいきませんもんね?」
「そうでもないです?」
私は常々、創業者の方の方が遥かに大変だと思っております。
だって全部自分でやらないといけませんからね!
決まったお客様だってまだそれほどいらっしゃらないかもしれませんし。
おまけにその場所にそのお店が存在してることすら知られていない状況で仕事をはじめるなんて、よほど大きな覚悟と、それを越える大きな志がないとできないでしょうからね!
事業を新たにはじめる、本当それだけで尊敬に値します。
私のような後継者は既にお店も多少知れておりますし、商売をするためのノウハウの蓄積もございます。
そして何より先代からご愛顧頂いてる多くのお客様がいらっしゃいます。
つまりは、既存のお客様の数、これが創業者と後継者の大きな違いだと思っておりました。
でも最近思うんです。
実は創業者も後継者もあまり違いはないんじゃないかって・・・
ここからは実体験に基づく感覚なので一般的なデータとは違うかもしれませんし、もちろん業種によっても変わってくると思うんですが
先代の影響ってもって一年じゃないでしょうか?
多分我々印章の世界はお客様のご購入サイクルがとっても長いですから、いまだにあなたのおじいちゃんに作ってもらった判がよかったから来たよ、ってお客様もいらっしゃいます。
それはもちろん感激する位ありがたいことなのですが、それだけでは現状を維持する事は不可能です。
最初の半年位は、先代がいなくなった事を知ったお客様や、それを知らずに今まで通りご来店頂くお客様が多くいらっしゃいました。
でもその方々は私に注文をしたくてご来店されるワケではなく、先代の親父に会いにいらしてた方々になります。
私も友人が働いてるから行っていたお店に、その友人がいなくなれば行かなくなる場合も多々ありますからね。
お買い物ってその「人」から買いたい、作ってもらいたいって欲求がどこかにありますよね?
そしてなぜかその目当てとなる人間がいなくなり、他のスタッフさんが物足りないと、他のお店を探したりする物です。
なのでその先代の影響力が維持している、つまりはその他店に移ってしまうまでの猶予が一年位なのかなと思うのです。
そしてそんな事を全く知る由もなかった私は、その大切な一年の間に何をしていたかと言いますと
ただ目の前の仕事をこなしているだけでした。
本当ただ社長がいなくて、何も考えない社長代理がいるだけみたいな状態でしたね。
そしてそれはきちんと結果に現れ、驚くほどお店の売り上げも減少しました。
で、ようやくその時に気づくワケなんですよ。
そしてそこから私の試行錯誤がはじまり現在に至るワケなのですが、ある時ふと思ったんですね。
昔から鈴印を愛して下さったお客様も私が何もしなければ離れていく。
だって魅力あるハンコ店さんは世の中には他に数えきれないほどございますからね。
比較するのもおこがましいですが、かのAppleもスティーブジョブズといるカリスマ社長がいなくなり迷走しています。
当然ですよ、社長が変わればそれまでいかに優秀な副社長でも社長としては素人ですからね。
つまりお客様は創業者だろうが後継者だろうが、その人が魅力あるお店作りをできているか、
その一点を着目されているんだろうなと。
ご自身の大切なお金を使う場所ですから、みなさま真剣です。
だからそのご期待に応えられるようにするには、創業者でもなく後継者でもなく、そのトップ次第なんですよね。
ある方がおっしゃってました。
お客様は常に進化している。
同じ物じゃ慣れちゃうし飽きちゃいますからね。
だから販売する側はそれ以上に進化しなければ、いずれ淘汰されてしまうと。
後継者は先代との比較される事は常かもしれませんが、お客様から見て現状維持できているように見えるかは、進化している事なんだそうです。
つまりは創業者だろうが後継者だろうが、進化しつづけない限りいずれ淘汰される事は一緒。
そしてその進化する力は、腕力でもなく体力でもなく「心の強さ」
決して折れない心の強さだそうです。
心・・・訳すとハート
なんか案外行けそうな気がしてきた?