ここでは「実印を作る」ことに隠されている意味を解説します。
「実印を持つこと」=「大人になった気がする」
なんて感想を持たれる方が多いのが特徴ですが、そこにはちゃんと理由があります。
実際の体験談も併せてご紹介しますので、その確信がスムーズに理解できることでしょう。
2021年6月12日に公開したブログですが、2022年10月1日にリライトしました。
実印があって嬉しかった
友人の女性の話です。
彼女は結婚の際に、ご主人から実印を贈られたそうです。
専業主婦だったため登場する機会もなく、どこに置いたのかすら忘れてしまうほどだった。
ところがお子さんも大きくなり、仕事を始めることになりました。
しかも不動産関係の個人事業主としてスタート。
すると親会社の方から、実印などの印章を用意することを指示されたそうです。
「そう言えば良いのもらってたんだよね」
不動産関係であれば、お客様と高額取引の契約を交わす仕事。
つまり実印が必須になり、かつそこで信用を得る必要があるわけです。
そんな理由もあって良い実印が手元にあることが急に嬉しくなり、しっかり磨き直したりして大切にするようになったそうです。
もちろん仕事では実印以外の印も必要になりますが、全て揃っていたとのこと。
個人事業主になることは想定外だったんですが、なのに慌てずむしろ誇れるほどの実印があったことがすごく嬉しかったんです。
見ててくれたんだなって。
個人事業主になり、実印が必要になる。
つまり責任者になった証が実印とも言えます。
実印を作るときは責任者になるとき
印鑑が必要になるときは突然訪れます。
多くの人は、車やバイクを買うときに用意します。
営業の人に言われて急遽必要になる。
その彼は言います。
今振り返ると、あの時初めて責任者になったんですよね。
それまではいくら粋がっていても、大人ぶっていても所詮子供扱いでした。
よく考えればわかります。
だって親が支払ってくれていたんですから。
だけど実印を求められるようになってようやく、一人前になれたような気がしました。
だってもし私がその契約に見合わなければ、捺印を求められるところまで辿り着けないわけですよね?
なんか社会的に認められた感じが、責任感と共に心の底から湧いてくるのがわかりました。
一言で言うと嬉しかったです。
この事例からも分かるように、実印を作るときは責任者になるときなんですね。
では次になぜ高額商品を買うときは実印が必要なのか?
その理由をご紹介します。
印鑑を捺すことは意思の担保
「担保」ちょっと難しい言葉です。
まずはそこから。
担保っていろんな意味があります。
一般的に「お金を返せなくなった場合に、代わりに渡すもの」の意味で使われることが多いですかね。
ドラマとか漫画にも「担保を出せ」なんて使われています。
でもここでいう担保はちょっと違います。
ちなみに調べてみると、このようになっています。
たん‐ぽ【担保】
1 将来生じるかもしれない不利益に対して、それを補うことを保証すること、または保証するもの。抵当。「土地を担保に入れる」
2 債務者が債務を履行しない場合に備えて債権者に提供され、債権の弁済を確保する手段となるもの。物的担保と人的担保とがある。
3 (特に、物品などの形(かた)を取らないで)その事を保証するもの。「消費者保護実現の担保はない」「法律によって担保する」出典:デジタル大辞泉(小学館)
ここでは3の意味。
担保=保証するもの
これですね。
印鑑を捺すこと=意思の担保
これはつまり
印鑑を捺すこと=自分の意思を保証するもの
ということになります。
高額な商品を買うってことは、大きな契約になります。
だからお店側からすると、お客さんが突然気が変わって「やっぱやめた」なんて言われちゃうと困りますよね。
って言われても、証明するものがないとご破算になってしまいます。
そのために意思の担保として契約書に印鑑を捺してもらいます。
わかりやすいよう極端な例を出すと、飲食店さんの予約。
よくドタキャンで困るなんて話がありますが、予約の契約書に実印を捺して印鑑証明書を添付してもらえれば防げます。
現実的には、それじゃ面倒なんで予約しないという別の問題が出てしまいますが、捺印の意味がなんとなく伝わるかと思います。
捺印には責任が伴う
実印って、最初に捺すまで意味がよく分からないことが多い。
だから急に「実印と印鑑証明書をご用意ください」なんて言われても、ピンとこない。
ところがいざ契約の席に向かうと、驚くような金額の契約書を目にします。
そこに自分の名前を書き、最後に実印を捺す瞬間の覚悟と緊張感で、初めてその意味を理解します。
自分で責任を負う、もう逃げも隠れもできない、そんなプレッシャーを感じるからなんでしょう。
責任は選ばれしものしか負うことができません。
責任者って車の運転手に似ていませんか?
助手席では荒いとか遠回りじゃないとか色々気付くけど、いざ自分がハンドルを握ると最初は分からなくなってしまう。
限界を超えてスピードを出し過ぎて大事故になった際は全て、運転手=責任者の責任です。
捺印も一緒です。
連帯保証人なんて、大事故と一緒です。
前述した通り、実印を求められることは責任者になることです。
一瞬の判断ミスが命取りになることは、車の運転とそう変わらないのです。
捺印の瞬間も一瞬ですが、責任はその後ずっと続きますから、ぜひ慎重にご決断ください。
最後に
最後にまた違う方の言葉で締めたいと思います。
誰もが簡単に実印を必要とする契約ができるわけじゃないんです。
動機はいろいろあります。
車やバイクの購入、結婚、家の購入、法人設立など。
スムーズに行くことなんてあまりありません。
いろいろ乗り越えて、そこに辿り着かれています。
ある方はこんな言葉を残してくれました。
私にとって実印を作れたことは、ここまで来たという印(しるし)です。