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印鑑の書体の選び方

  1. 手彫りと手書き
  2. 2320 view

印鑑に使われる文字って独特ですよね?
なぜそんな変わった文字を使うのか。
その理由とともに、オススメの書体をご紹介していきます。

2019年12月14日に公開したブログですが、2021年10月28日にリライトしました。

個人向け印章具の書体とルーツ

まずはなぜ印鑑に複雑な文字が使われているかと言いますと、印章の歴史を紐解く必要があります。
印章の歴史は古代メソポタミアまで遡りますので、その名残が残っているんです。
また「象形文字」を、秦の始皇帝が漢字として統一した「篆書」に移行していく歴史の間も、印章は存在しています。
つまりそれらの長い歴史を経て、現在の文字が選ばれているんですね。

現在、印鑑に使われている書体を羅列すると以下の7書体になります。

印相体・篆書体・古印体・隷書体・草書体・楷書体・行書体

これを基に縦にしたり横にしたり、また印相体などは篆書の派生だったりと、かなりの種類になっていきます。
またお店ごとにオススメの文字があり、聞く人やサイトによって説明が違っていたりもするんです。
では次に、書体ごとを個別に詳しく見ていきたいと思います。

 

印相体

 

複雑で重みがあり、実印や銀行印の書体で今一番人気なのが印相体

篆書をベースに全ての線を伸ばして枠に付け、別名吉相体などと呼ばれる印相体。
「縁起が良いから」「隙間がなくたっぷり入っているから」「どっしりとして重みがあるから」などの理由から、近年もっとも人気の高い書体となっています。

ただ歴史的には印鑑に使われる文字の中で最も新しく、昭和50年頃に誕生しました。
その際に新聞広告等で「印鑑にも相があり、八方に運気が広がる縁起の良い書体」と一気に広まり、それまで主流であった細くスッキリした篆書体から、太くどっしりした印相体がトレンドになっていきました。

比較的新しい書体ということで、ネットや職人の間でも賛否両論見受けられますが、鈴印としては肯定的に捉えています。
なぜなら全ての書体の中で一番自由度が高いため、お店の個性が出しやすいからです。
デザインの性質上どんなお名前でもアレンジできるため、実印や銀行印の書体で迷ったら印相体、そんな判断でもよろしいくらいです。
またひらがなやカタカタであれば下記のSK印相体とならび、特にオススメ致します。

 

篆書体

凛とした高級感があり、実印や銀行印の書体で最も歴史があるのが篆書体

実印として一番歴史が古く、もはやスタンダードと言っても過言ではない書体です。
印相体にも負けないくらい重みがありますし、何より印相体ほど複雑ではないため、ある程度の判読も可能。
全ての書体の中で、一番バランスの良い書体が篆書です。

その価値は日本銀行券、いわゆるお札にも押してあることからも分かります。
ちなみにお札の表には「総裁之印」裏には「発券局長之印」と彫ってあり、江戸後期の篆刻家「益田香遠(ますだこうえん)」が手掛けられました。
詳しくはこちらのブログをご覧ください。
歴史と伝統、そんな言葉が篆書にはぴったり。
一流の職人技を味わいたければ、やはりこの篆書が一番です。
天地左右を枠に付け、枠を細く文字を太く彫るのが現在最も主流ですが、密かに枠が太くて線が細いクラシカルな細篆書も、一巡回って真新しさが満載です。
ちなみに印相体とどちらにするか迷った際は、実印の書体は篆書体がいいの?印相体がいいの?をご覧ください。

 

古印体

読みやすいのに重厚感があるため、認印に人気なのが古印体

隷書を基に線を枠に付け、印鑑専用として独自の発展を遂げたのが古印体です。
元々重みのある隷書がベースにあり、たっぷりと配字されかつ読みやすさと趣があって、認印に人気です。

歴史的には、大宝律令で印章の使用が定められ、国之印や自社之印など多くの印が制作されてきました。
その後長い年月を重ね、土中に埋もれていたそれらが掘り出され、破損や腐食による思いがけない雅味を印人が見つけ、書画文人の印章に刻して発展させてきたのをルーツとします。
その欠けや墨溜まりなどの風合いが職人によって大きく異なり、また読みやすい雰囲気と相まって美しく仕上げるには相当な技量を必要とします。
また人気ゆえに一般的でもあり、他者と区別する意味で斜めに入れて作るのもお洒落です。

 

隷書体

人とちょっと違う認印などに人気の隷書体

文字の歴史としては、篆書に次ぐ古い文字です。
秦の始皇帝時代、程バクという下級役人が獄中で10年間かかって三千文字位作り、使用を許されたという俗説もありますが、基本は篆書を読みやすくした文字。
不思議と漢字は古いほど重厚感があり、格式高い雰囲気が味わえます。

またこちらも篆書同様、お札の金額や「日本銀行券」の文字に使われいる由緒正しい文字。
ちなみに横幅が広い特徴から安定感があり、安定をイメージする銀行などのサインには隷書が多く使われています。
彫刻する際には、枠に付かないよう内側に配置するのが基本ルール。
またどの文字にも必ず1つだけ「波磔(はたく)」と呼ばれる一番強い主役の線があるのが隷書の特徴になり、印章製作においては丸い枠との兼ね合いに腕が問われます。
その特徴から印にした場合も、キリッとした雰囲気に仕上がります。

 

草書体

最も柔らかい雰囲気のため、昔から女性の銀行印や認印に人気

以前は女性の印として非常に人気の高かった書体です。
彫り直しでお持ちいただく場合に、女性のお名前は草書が多いことから人気の高さが伺えます。

一般的に漢字の成り立ちの順番って、楷書→行書→草書だと思われていますが、実はちょっと変則的です。

  • 隷書→草書
  • 隷書→行書→楷書 ※厳密には行書と楷書に順番ははっきりしていないそうです

と、2つの流れによって現在に至るようです。
ちなみにひらがなはこの草書からできているため、文字の歴史の中でも重要な位置を占める書体。
また草書の「草」は草稿などの「草」で、下書き等の意味もあるため、現在では実用場面ではあまり使われていません。
実用的でないこと、すなわち文化的。
そんな理由から昔から侘び寂びを大切にされる方に人気の書体。
隷書同様、枠の内側に配置させるため、すっきりと優しい雰囲気に仕上がります。

 

小篆体

他にはない独特な柔らかい雰囲気で、落款風実印として女性のお名前の印に非常に人気

こちらは鈴印オリジナル書体です。
落款印をモチーフに、独自の解釈で登録印にも使えるようにした、他では見ることの出来ない文字。

小篆(しょうてん)という書体は、秦の始皇帝が宰相李斯に命じて定めた漢字の紀元の文字で、当然ここでは最も古い文字です。
私たち職人の世界では競技会などで使われる由緒正しき文字にも関わらず、あまり一般的でないのは彫刻に困難を極めるから。
それを実用印として1990年頃から提供し始めたのは先代、鈴木晴夫。
きっかけはお客様の声で「女の子なので、しなやかに女性らしく柔らかい書体で」というご要望だったそうです。
それまでは篆書や印相体に代表される重みのある雰囲気や、行書などの読みやすい書体しかなく、実印としてのご要望を満たすものではありませんでした。
そこで晴夫は、落款に使用される小篆をアレンジすることで、登録印としての重みと柔らかさを併せ持つ雰囲気を完成させました。

落款風実印のさらに詳しくはこちらから

※繊細な文字の特性状、機械彫りのチタン印は、フルネームに対応しておりません

 

SK印相体

完全鈴印オリジナル書体で、あらゆる場面でスタイリッシュにご使用いただけます

こちらは鈴印オリジナル書体です。
印相体をモチーフに直線で構成し、独自の解釈で登録印にも使えるようにした、最もスタイリッシュな文字。

他では作れないグラフィカルな書体を求める方にご好評いただいているSK印相体。
発想の原点は、友人のカケラデザイン、インスパイア系。
これまでの印章にはない直線的な構成でありながらも、ベースは鈴印の印相体を使用しているため登録印としても使えます。
元々はチタン専用として誕生した書体ですが、多くの方のご要望により現在は全ての素材に対応しています。
特に若い世代に全ての用途において人気です。

SK印相体のさらに詳しくはこちらから

 

書体の選択に迷ったら・・・

まずはお気軽にお問い合わせください。
お名前と御用途をお伺いした上で、最適な書体をご提案させていただきます。

お問い合わせしにくい場合もご安心ください。
ご注文の際、書体に「おまかせ」をご用意しておりますので、そちらをご選択ください。

 

印相体か篆書体で迷ったら?

一番多いのは印相体か篆書で迷われるパターンですが、現在は印相体の方が人気です。
印相体はデザイン性が高いため、どのような文字でも綺麗に取り込める一方、やや判読が難しくなる傾向があります。
逆に多少は読めて、かつ安定した雰囲気を大切にされる方には篆書がオススメです。
一言でまとめるなら、

デザイン性が高い雰囲気が好き=印相体
クラシカルな雰囲気が好き=篆書体

ブログにもまとめていますので参考に。
実印の書体は篆書体がいいの?印相体がいいの?

 

印相体かSK印相体で迷ったら?

店頭でも悩まれる方が多いのがこちら。
昔からある印相体と、スタイリッシュなSK印相体。
基本的には上記のサンプルをご覧になりながら直感で選ばれるのが一番と思います。
またこれまで作ってきたイメージですが、雰囲気に重みがあるのが印相体で、おしゃれ感があるのがSK印相体です。
そのため象牙や水牛などは印相体、チタンやリアルブラックなどはSK印相体を選ばれる方が多いです。

 

SK印相体のどれかで迷ったら?

SK印相体にはⅠ・Ⅱ・Ⅲと種類があり、迷う方も多いようです。
当初のイメージは男性的なⅠ、女性的なⅡ、細字のⅢ、をイメージしていました。
ただ実際は性別問わず一番人気はⅡです。
適度に直線と曲線が入り混じり、印章としてスタイリッシュかつ馴染みのある雰囲気はⅡ。
そのためもし迷った際は、Ⅱがオススメになります。

 

自分の名前がどの書体と相性が良いのか迷ったら?

これは考えても結論が出にくいお悩みです。
サイトによってはイメージビューなどが見られるようになっていますが、鈴印の場合は全て手書きのため対応致しておりません。
ただし、そんな方のために「書体おまかせ」をご用意しています。
お名前から、最適な書体とイメージチェック用の手書きの校正をご用意させていただきます。

 

そもそもどれが良いのか分からない?

とにかく迷った際は「書体おまかせ」をお選びください。
「こんな雰囲気希望」などご要望もあれば、備考欄にご記入ください。

私たちにあなたのイメージをお聞かせください。
それらの中から最適なデザインをご提案致します。
お一人お一人のお名前に最適な文字をセレクトし、レイアウトしながら判下を書き、彫っていくのが私たちの仕事です。

 

鈴印

〜印を通してお客様の価値を高めたい〜

鈴木延之
代表取締役:株式会社鈴印

1974年生まれ。
A型Rh(+)

1932年創業、有限会社鈴木印舗3代目にして、現プレミアム印章専門店SUZUIN代表取締役。専門店として、印章(はんこ)を中心としたブログを毎日発信。本業は印章を彫る一級印章彫刻技能士。
ブログを書き出したきっかけは、私の親父が店頭で全てのお客様に熱く語っていた印章の価値や役割そして物語を、そして情報が散見する中で印章の正しい知識を、少しでも多くのみなさまに知っていただきたいから・・・
だったのに、たまに内容がその本流から全く外れてしまうのが永遠の悩み♡

一級印章彫刻技能士
宇都宮印章業組合 組合長
栃木県印章業組合連合会 会長
公益社団法人全日本印章業協会 ブロック長

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